苗札に拙き文字の二つ三つ
 墨消えて何の苗札とも知れず
 明日香野に立ち万葉の草を摘む
 慎ましく日本菫の香り立つ
◎草摘みてしばし万葉人となり
 鉢の皆まだ苗札の立つばかり
 大いなる飛行船行く霾曇り
◎霾るは厭放射能もっと厭
 小魚の数種混りし白子干し
 霾りて昼濃く灯す中之島
◎苗札を立て終へ小糠雨となる
 苗札に書けぬ長さの品種名
 草を摘む小さき幸せ味はひつ
 苗札を立てて退きまた眺め
◎苗札も匂ふが如くハーブ園
 消える字をなぞり苗札差し直す
◎木々の芽に応ふる土の息吹かな
 霾や六甲の峰すっぽりと
 試食して買はされる破目白子干し
 おとなしく待ちゐる犬や草を摘む
 摘草や抱ける嬰を野におろし
 土筆摘む長けたるものも小さきも
◎苗札や後は陽まかせ雨まかせ
◎太極拳つちふる街の公園に
◎片仮名の苗札一字土の中
 白子干一点赤き蟹のゐて

敏夫
浩一郎
敏夫
元彦

浩一郎
幹三

元彦
浩一郎
暁子
幹三
言成
洋一
暁子
洛艸
あや
洋一
義雄
暁子
箕川
輝子

言成
浩風
輝子

林 直入 選

第508回 平成24年3月19(月)

兼題  白子干・摘草(直入) 苗札・霾(あや)
席題  卓上に 匂菫・わらび

◎苗札の使命果たして文字の消え
 白子干し百の命を一口に
 まなうらに芭蕉浮べりすみれ草
◎苗札を立て委ねをく天地に
 大いなる飛行船行く霾ぐもり
 海よりの光あまねし草を摘む
 黄沙きし牛目つむりて動かざる
 翁また草摘むといふことのあり
 しろがねの雨滴を抱きて牡丹の芽
 椿散る山路の果ての慰霊塔
◎何の芽か庭隅の土動かして
 つちふるや天空流る風の川
 霾拭ひつ万象畏るこころかな
 大いなる阿蘇霾天の下にかな
 遠州の浜を眩しく白子干す
 白子干あち見こち見の無数の目
 艀の子艀に摘み草持ち帰る
 草摘めば幼馴染みの有りや無しや
 摘み草をして土の香を持ち帰り
◎摘み草の故郷捨てし家族かな
 国境は遮断機のみよ霾れる
 苗床に淀川の土盗み来し
 霾るや海鳥声を交わし飛ぶ
 春愁やどこかの家で鳴る電話
 寄せ返す波のまばゆき白子干
 摘み草や今は名のみの紫野
◎白子干酢加減のよき男料理
 ゆるやかに井堰を越ゆる春の水
 飛鳥野に立ち万葉の草を摘む
 如月の旅の荷に足すシャツ一枚



浩風
太美子
幹三
暁子
ゆたか
浩一郎
太美子

道子
眞知子
太美子
ゆたか
太美子
暁子
浩風

敏夫
元彦
浩風
直入
浩風
幹三
直入
眞知子
暁子
道子
敏夫
輝子

長山あや 選

 よき日射しよき風白子干日和
 苗床に思はぬものの芽吹きゐし
 豊漁と好天続く白子干
 草摘んで摘んで手籠のなほ軽き
 苗札も土の黒きも真新らし
 国生みの島包み込む木の芽雨
 霾りて昼濃く灯す中之
 草摘みて夢見るごとく呟きぬ
 墨消えて何の苗札とも知れず

直入


あや


浩一郎

 

選者吟

アンカー

 よき日射しよき風白子干日和
 如月の旅の荷に足すシャツ一枚
 淡路島からの宅配白子干
 大いなる飛行船行く霾ぐもり
 思ひ出はにほひすみれの彼方かな
 胡沙荒るるモスクの国の人やさし
 あたたかやおのころ島に俳句の輪
 苗札を立て終へ小糠雨となる
 霾るや親しき山の見え隠れ
 学名の横書き縦に苗の札
 大いなる阿蘇霾天の下にかな
 遠州の浜を眩しく白子干す
 ひそひそと木の芽の声の積もる樹下
 艀の子艀に摘草持ち帰る
 もやもやと曖昧模糊に山笑ふ
 木々の芽に応ふる土の息吹かな
 黒土に挿せし苗札数へをり
 苗床に思はぬものの芽吹きゐし
 摘草や抱ける嬰を野におろし
◎苗札も土の黒さも真新し
 草摘んで摘んで手籠のなほ軽き
 白子干す日差したっぷり蜑の村
 国生みの島包み込む木の芽雨
◎摘草の人あらはれし土手の上
 ゆるやかに井堰を越ゆる春の水

直入
輝子
言成
幹三
あや
箕川
あや
暁子
浩風
瑛三
ゆたか
太美子
あや
浩風

あや
幹三
直入
箕川
あや
あや
瑛三
あや
幹三
道子

井上浩一郎 選

 花の下クラブ勧誘若き声
◎春眠の耳より覚めてきてをりぬ
 児を呼べばこだまがかへり山笑ふ
◎春眠や七人の敵皆忘れ
 青麦の青の濃淡段々畑
 春の夜の砂糖たつぷりミルクテイー
◎春の夜の間延びして鳴る鳩時計
 さわさわと音の乾いて麦は黄に
 職退きて真の春眠ほしいまま
 花木瓜の棘をかくして華やげる
 春の夜や一つの影となる二人
 春の夜星またたきの緩やかに
 開通す高速道路麦青む
◎春眠を重ね重ねてまだ眠し
 春の夜の音吸ひし闇ひたと濃く
 宴果てて帰るでもなし夜半の春
 青麦のよそよそしくてつんとせり
 春の夜の因数分解まだとけぬ
 豪雨にもめげず青麦天を指し
 嵐の夜明けてまぶしき初桜
 掌中の細螺ぬるりと動き出す
 古手紙繰り返し読む春の夜
◎殺生な春眠を断つ妻の声
 春眠を自分にゆるす齢かな
 来し方を思ふ春の夜闇重し
 春眠をまた誘ひくる単語帳
◎春眠の底より徐々に這ひ上がる
 ほしいまま春眠をして孤独なり
◎春眠や電池きれたるごと眠り
 春眠の夢に徨ふ母若し
 自販機に礼言はれをり四月馬鹿
 ひとり碁は睡魔が相手春の夜


幹三
義雄
箕川
あや
輝子
眞知子
香月
洛艸
輝子
浩風
敏夫
敏夫
箕川
眞知子
洛艸
ゆたか
輝子
洋一
京子
敏夫
洛艸
浩風
道子
眞知子
輝子
暁子

眞知子
言成
幹三
浩風

林 直入 選

第509回 平成24年4月16(月)

兼題  春の夜・細螺(直入)青麦・春眠(あや)
席題  卓上に 木瓜・椿・山吹

◎ぽつぽつと小さき古墳や麦青む
◎春眠の耳より覚めててをりぬ
 春眠をむさぼりて解くわだかまり
 児を呼べばこだまがかへり山笑ふ
◎山吹の出し惜しみなく濃かりし黄
 春眠や七人の敵皆忘れ
 夜桜に祗園白川酩酊す
◎掌に細螺残して潮満ちぬ
 入幕の近き力士か麦青む
◎春の夜間延びして鳴る鳩時計
 青麦に被災地の笑み戻るらむ
 職退きて真の春眠ほしいまま
 回送車虚しく走る春の夜
 青麦や石に石積む音のする
 花木瓜の棘をかくして華やげる
 陣取りの役目の後の花疲れ
 春の夜や一つの影となる二人
 細螺弾き笑ふ子の歯の白さかな
 酔顏の視野に優しき春の夜
 あか金の大屋根工事梅日和
 咲くものの香をのせ風の光りける
 春の夜の華やぎにゐる姥かな
 モーツアルト聴きゐる人と夜半の春
 春の夜の音吸ひし闇ひたと濃く
◎土白く乾きゆく朝麦青し
 宴果てて帰るでもなし夜半の春
 春の夜の因数分解まだとけぬ
 日よ風よ大地につんと麦青む
 思ひ出を酌み交しをり夜半の春
 青麦の芒ちくちくと下校道
 春眠の覚めつつありて雨しきり
 麦青む頃一年の計も成り
 春眠を自分にゆるす齢かな
 みどりごの春眠時にほほえみて
 クリムトの絵画の世界春の夜
 駅を出て春の夜道を楽しみぬ
 怪奇小説にはまりし春の夜
 春眠の底より徐々に這ひ上がる
◎春の夜の稿の進まぬ侭に更く
 保育所へいそぐ父と子麦青む
◎春眠や妻留守のこと忘れゐし
 入学の子の背のランドセル硬し
 春眠の夢に徨ふ母若し
 春の夜や目覚むればまた宿の温泉へ
 青麦の天突く勢村もまた

洛艸
幹三
眞知子
義雄
直入
箕川

敏夫
元彦
眞知子
義雄
洛艸
暁子
幹三
輝子
洋一
浩風
幹三
浩風
京子
香月
箕川
嵐耕
眞知子
敏夫
洛艸
輝子
嵐耕

道子
ゆたか

道子
嵐耕
京子
直入
直入
暁子
直入
輝子
浩風
幹三
言成
義雄
洛艸

長山あや 選

 図鑑には大きく画きある細螺
 春の夜の稿の進まぬ侭に更く
 酔ひ早く覚むるも早き春の夜
 青麦の青の濃淡段々畑
 みよし野の眠らぬ花の闇深し
 遠き日の砂をこぼして細螺貝

直入


あや

 

選者吟

アンカー

第510回 〈吟行句会〉平成24年4月29(日)

吟行地  水上バスでの大川遊覧、大阪城公園
句会場  ドーンセンター研修室

 大橋の下春陰をなせりけり
 新緑の樹海の上に天守閣
 城広し額に汗する程広し

直入

 

選者吟

アンカー

◎秀頼と淀自刃の地桐の花
 夏めくや大噴水の勇み立つ
 春惜しみゆらりと船の出航す
 自刃の地花桐散れり一花づつ
 葉桜の広ごる造幣局静か
 金の鴟尾光る天守や桐の花
 船着場に水の匂ひや夏近し
 花は葉に昭和も古りぬツインビル
◎太閤さんの濠に生れし蜻蛉かな
 薄暑はや石段高き城に入る
◎心身にみどり満喫みどりの日
 大阪の水の匂ひや船遊び
 自刃の碑ありて青条揚羽かな
 新緑の杜に顔出す金の城
 天守閣金をはなちて風光る
 空にたつ天守を囲む若葉かな
 一枝の残花未練と見てしまふ
 若葉径どこ辿りても視野に城
◎無き風に真直ぐに落つ桐の花
 百千鳥大手門への下り道
 なつかしき名の橋潜り船遊び
 濠飾る花水木のみとは淋し
◎絵筆とる人を撫でゆく若葉風
 蕪村生れし毛馬も近くや春惜む
 レストランに若き日の曲昭和の日
◎牡丹を衾としたる虫の贅
 銀輪の競ふ川端若葉風
 川の春表面張力緩ませて
 城堀の波静かなり残る鴨
◎夏きざす日影川面を跳ね回り
 金の虎描く天守や桐の花
 桐の花淀君自刃の碑へ散りぬ
 春の川橋守る鷺の動かざる

言成

眞知子

敏夫
輝子
幹三
瑛三
幹三
輝子
太美子
箕川
幹三
元彦
太美子
道子
輝子
暁子
敏夫
元彦
輝子
瑛三
敏夫

暁子
太美子
眞知子
浩風
道子
京子
幹三
敏夫
言成

林 直入 選

◎池の面に五月の天守くきやかに
 春惜しみゆらりと船の出航す
 樹々ぬいて空に五月の天守かな
 葉桜の広ごる造幣局静か
 栴檀の木橋に霞む生駒山
 緑青のドーム耀ふ新樹光
 過ぎし世の夢の化身や春の城
 薫風や窓越しに見る天守閣
◎大阪の水の匂ひや船遊び
 並木いま新緑となる御堂筋
 中之島昭和は昔初夏の風
 新緑の杜に顔出す金の城
◎葉桜に染まりて船の往き来かな
 空にたつ天守を囲む若葉かな
 大川に新緑映えて魚跳ねて
 新緑に溶け合ふ古城とモダンビル
 剣先で初夏の川風交叉して
◎無き風に真直ぐに落つ桐の花
 通り抜け終りし岸辺花は葉に
 名残惜し下船の刻や暮の春
 人声の極楽橋を渡り来る
◎潜りゐし鳥待つ静寂春惜む
 水の香や初夏夕ぐれの橋いくつ
 蕪村生れし毛馬の近くに春惜む
 川端の並木まぶしき新樹なる
 新樹光礎石に日の斑浮き立たせ
 内堀の若葉明りの静寂かな
◎新緑の樹海の上に天守閣
 城広し額に汗する程広し
 川薄暑表面張力緩ませて
 真青なる大画布城と花水木
 大阪城かこむ緑蔭大緑蔭
 桐の香や淀秀頼の自害の碑
 花桐の風むらさきに碑を鎮む
 新樹燃ゆ人語鳥語と入り交じり
 城堀にたつた一羽の残り鴨
 葉桜の風に急かるる遅参かな

道子
眞知子
道子
敏夫
元彦
浩風
暁子
浩風
箕川
言成
ゆたか
元彦
暁子
道子
眞知子
茉衣
ゆたか
敏夫
瑛三
暁子
道子
太美子
ゆたか

眞知子
浩風
太美子
直入
直入
浩風

暁子
元彦
太美子
浩風
輝子
瑛三

長山あや 選

 週末のゴルフ断り袋掛
 低き枝は妻にまかせて袋掛
 わが宿の窓辺眠らぬ朴の花
◎流れ行く雲の行く手に朴の花
 十薬をつくづく眺め手を洗ふ
 街新樹窓開け放つ喫茶店
 新樹かげ園児迎ふるバス停る
 乾坤の全き碧さ朴の花
◎風薫る金環蝕の小半時
◎七曲り眼下に確と朴の花
 天変の無きこと祈る袋掛け
 人住まずなりし屋敷の新樹かな
 嬰児をいたはるやうに袋掛
 袋かけせぬ半分は鳥のもの
 朴の花香の濃淡は風まかせ
◎人の嗅ぐ高さに薔薇の咲いてをり
 名にし負ふ市役所囲む樟新樹
 容赦なく摘果も進む袋掛け
◎袋掛右に左に島のバス
 夜の新樹かぐはし門を入りてより
 ケーブルの谷間に光る朴の花
◎袋かけ終へて一泊旅行とや
◎ほらあそこそれでも見えぬ朴の花
 (この炊きし筍飯も妻の味
 小さき灯に被さるやうな夜の新樹

瑛三
暁子
太美子
洋一
敏夫
輝子
箕川
浩風
元彦
洛艸
和江
箕川
洛艸
輝子

幹三
元彦

太美子
ゆたか
嵐耕
輝子
輝子
洋一
太美子

林 直入 選

第511回 平成24年5月21(月)

兼題  新樹・袋掛(直入) 朴の花・筍飯(あや)
席題  卓上に 柿の花・柿若葉・十薬・紫蘭・蕗

◎水浴びの小鳥のしぶき杜若
 わが宿の窓辺眠らぬ朴の花
◎蕗の葉の大風呂敷を拡げたる
 流れ行く雲の行く手に朴の花
 声かけて筍飯を仏飯に
 袋掛終へさわさわと梨畑
 朴の花遙かに光る鳰の湖
 一家族力よせ合ひ袋かけ
 つぎつぎに鳥の飛び出す新樹かな
 朴の花雨の一夜に耐し白
 掛け終へて島は袋の花盛り
 三川の水音高し新樹晴
 気が付けば新樹の候も闌けゆきぬ
◎金環食新樹のかをる庭に立つ
 万緑の継ぎ目継ぎ目のマヤ遺跡
 兄弟の喧嘩も楽し菖蒲風呂
 歩の若し風の新樹に沿ひゆけば
 風薫る金環蝕の小半時
 新樹晴手術の首尾は上上吉
◎メサイヤ果て新樹の闇に紛れ行く
 深山の月の光や朴の花
 二階より眺めむと聞く朴の花
◎豊作の筍が又来るといふ
 喜寿すぎて想ひ出あらた母の日に
 袋かけせぬ半分は鳥のもの
 夜の帳おりて新樹の香の籠る
 太陽の欠けたる朝の若葉冷
 同窓会筍飯の出て終る
 ベランダの朝食涼し天体シヨー
 鬱然と石山寺の新樹かな
 袋掛右に左に島のバス
 夏空の金環蝕へ鬨の声
(こ炊きし筍飯に妻の味
◎ふと浮かぶ筍飯の待つ夕餉
 新樹燃ゆ閑谷校の明り窓

京子
太美子
直入
洋一
太美子

輝子
ゆたか
幹三
暁子
洛艸
瑛三
眞知子
輝子
義雄
和江
浩一郎
元彦
輝子

京子
敏夫
道子
洋一
輝子
暁子
幹三
幹三

道子
太美子
元彦
洋一

浩風

長山あや 選

 袋掛しても侵せし虫の知恵
 館新樹結婚式が二組も
 朴の花開いてありし二階窓
 からまつの新樹に山荘閉ぢしまま
 朴咲いて庭の重心空にあり
 新たなるまなこに新緑眩しかり

直入


あや

 

選者吟

アンカー

◎簗を打つ運よき魚は逃れよと
 思はざる水勢のあり簗つくる
 子烏の枝移りして親ばなれ
 鳴き方も親に似てきて鴉の子
 さくらんぼアメリカ産のでかい顔
 染むらも意のままなるや額の花
◎額の花一人住まひの芥わづか
◎いたづらをせむとや育つ烏の子
 簗守のこぼす不漁のひとくさり
◎伸びすぎて心もとなき立葵
 短夜や読みさし本の頁閉ぢ
◎簗かけて峡の十戸の深眠り
 まだ飛べぬ烏の子ゐて小半日
 雨意重し匂ひ動かぬ栗の花
 栗の花散るいたいけな毬残し
 新種なれど色は馴染の額の花
 烏の子守る小さき杜一つ
◎北国の日ざし詰まりしさくらんぼ
 山盛りに銀の小皿のさくらんぼ
 昼見たる簗にかかりしうぐひとぞ
 さくらんぼ鉢一瞬に種と茎
◎素朴なる簗のたくらみ恐ろしく
 栗の花咲くと知らせる風匂ふ
 村ひとつ花栗の香に沈みをり
 栗咲いて丹波一国匂ひけり

輝子
暁子
ゆたか
義雄
眞知子
敏夫
暁子
輝子
洛艸
京子
洋一
浩風
輝子
眞知子
輝子
輝子
敏夫
京子
嵐耕
浩一郎

浩一郎
言成
あや
浩一郎

林 直入 選

第512回 平成24年6月18(月)

兼題  栗の花・簗(直入) 烏の子・さくらんぼ(あや)
席題  卓上に 未央柳・額の花

 すそ分けのそのすそ分けのさくらんぼ
◎一人居の庭の朝日やさくらんぼ
 栗の花散り敷く雨となりにけり
 種鮎の催促急や簗不漁
◎子烏の枝移りして親ばなれ
 よじ登り子烏捕りし近所の子
 愛の巣の所狭しと烏の子
 沈めたる竹魚簗青き里の川
 丹波路や里々匂ふ栗の花
 能勢路なるいづこも匂ふ栗の花
 いたづらをせむとや育つ烏の子
◎簗番屋とは朝酒も昼酒も
 林道のむんむんとして栗の花
 親鳥区別のつかぬ烏の子
 子烏の帰る竹藪村はづれ
 簗仕掛け峡の水音昂りぬ
◎簗小屋の真中にでんと大薬缶
◎簗かけて峡の十戸の深眠り
 桜桃の戦後三年太宰死す
 ごろごろとある一升瓶簗番屋
 禁色を惜しまず散らす額の花
 餌ねだる方が子どもの鴉らし
 簗くぐる川瀬の音の乱れざる
◎雨意重し匂ひ動かぬ栗の花
◎桜桃のさざめき紅く盛る白磁
 烏の子親の縄張り出てゆく日
 北国の日ざし詰まりしさくらんぼ
 さくらんぼ幼き日へと種とばす
◎素朴なる簗のたくらみ恐ろしき
◎簗衆のみんな酒好き博打好き
 尼様の手乗りとなりし烏の子
 さくらんぼ福島の味かみしめて
 簗かけていよいよ疾し千曲川
◎復興の便りのひとつさくらんぼ
 御田明け早苗に風は音もなく
 手には茎口の中にはさくらんぼ
 栗咲いて丹波一国匂ひけり

浩風
敏夫
浩一郎
直入
ゆたか

浩風
幹三
浩一郎
瑛三
輝子
直入
浩風
言成
浩一郎
浩風
浩風
浩風
瑛三
直入
言成
幹三
暁子
眞知子
浩一郎
暁子
京子
暁子
浩一郎
直入
瑛三
ゆたか
浩一郎
洋一
京子
幹三
浩一郎

長山あや 選

 栗の花匂ひこめかみ痛くなる
 簗番屋とは朝酒も昼酒も
 雨空の続く紫陽花腐つまで
 倖せのいろの濃淡さくらんぼ
 村ひとつ花栗の香に沈みをり
 人近く棲む街の子よ烏の子

直入


あや

 

選者吟

アンカー

 麦を踏むなべてズボンの老婆たち
 若布刈舟舟人隠るほども刈り
 麦踏の己の影を追うて行く
◎転校の別れの駅の春時雨
 麦踏や足裏に伝ふ息づかひ
 寂しさをいかに鎮めん春時雨
 一本の梅のあるじでありにけり
 銀色の雨をこぼせる猫柳
 麦踏の背は風に向き音を聴く
 三島すぎて二月の冨士を確と見し
◎捨てられし枝より萌ゆる猫柳
 止みしかと思へば光る春時雨
◎春愁や古りし俳誌の置きどころ
 小流れの人気の茶店猫柳
 諍ひの堂々巡春時雨
◎釣宿の帰りに呉れし干若布
 放射能測定器つけ麦を踏む
◎春時雨開きし傘に音のなく
 明るさの昏さの窓辺春時雨
 早春や野生りんごの花記憶
 姉川の水の涸れをり古戦場
◎砂洗ふぬめり懐かし新若布
 若布干す母なる海をしたたらせ
 朝市の海の香放つ若布かな
 猫の恋叶はぬ一部始終かな
 重なりつ離れつ影の麦を踏む
 山影の届き来るまで麦を踏む
 麦踏むや山と語らひ風を聴き
 梅が香や寄れば細枝に月青き
 三方の稜線淡し麦を踏む
 咲いてゆく梅に朝なのことばかけ
◎出不精をまた閉ぢこめる余寒かな
 春時雨花見小路の人力車

義雄
洛艸
幹三
茉衣
太美子
洋一
浩一郎
嵐耕
敏夫
箕川
敏夫
あや
義雄
義雄

洛艸
暁子
眞知子
浩風
茉衣
磨央
敏夫
あや
眞知子
京子

浩一郎
あや
浩一郎
暁子
浩一郎
和江
京子

林 直入 選

第507回 平成24年2月20(月)

兼題  若布・麦踏(直入) 春時雨・猫柳(あや)
席題  卓上に フリージア・水仙・菜の花・桃

 電線に並びし鳩も着膨れて
 一輪を梅咲き出づる風の中
 麦踏や足裏に伝ふ息づかひ
 寂しさをいかに鎮めん春時雨
◎一本の梅のあるじでありにけり
 銀色の雨をこぼせる猫柳
 麦を踏む白山の嶺々まだ白し
 六甲に日のありながら春時雨
 一村を貫ける川猫やなぎ
 届きしは海の匂と干若布
 冴え返る朝一山の読経かな
 春時雨一と雨ごとの遅々として
 軽くても嵩ばる土産干若布
 春愁や古りし俳誌の置きどころ
◎若布刈舟赤間の浦の波しづか
 早春の車窓暮れゆく富士の山
 放射能測定器つけ麦を踏む
◎麦踏やわが子育てに悔ありて
 若布採り浜再生の活気充つ
 相傘の止むなと願ふ春時雨
 新築の窓をぬらして春時雨
 とれたての若布の抱く海の青
◎降る雪に目を遊ばせて独り酒
 碧落や麦踏む土も黒ぐろと
 梅が香に寄れば細枝に月青き
 春時雨二上雄岳かくしけり
◎若布干すここ奥能登の空重く
 寒月や雲の合間に光洩れ
◎永き日の久久一気に読みし本
 友の葬春の時雨に送られて


浩一郎
太美子
洋一
浩一郎
嵐耕
瑛三
嵐耕
道子
輝子
浩一郎
言成
太美子
義雄
瑛三
道子
暁子
太美子
和江
洛艸
道子
眞知子
洋一
洋一
浩一郎
輝子
浩風
磨央
京子
道子

長山あや 選

 竿に干す若布筵に屑若布
 麦踏むやローム埃に目をつむり
 若布刈舟にはエンジンのついてゐず
 若布干す母なる海をしたたらせ
 麦踏むや山と語らひ風を聴き
 止みしかと思へば光る春時雨

直入


あや

 

選者吟

アンカー

 獅子舞の頭をとればいい男
 花街に風花自由奔放に
 風花の照り翳りして舞ひにけり
 風花の美しはかなし祗園かな
 正直に顏をゆがめる寒行僧
◎屈託を湯船に沈め除夜の鐘
 香りたつ朝の厨の芹なづな
 寒垢離と聞くだに竦み身震ひす
◎人住みし川辺に生える薺かな
◎歌留多取り誰かが泣いて終りけり
 風呂の柚子離合集散繰り返す
 仮設住宅巡る獅子舞高ぶらず
 風花に滲みし葉書投函す
 風花や下校の子らと戯れる
◎薺打つ夜の静寂に香と緑
 寒垢離や水も大気も張りつめて
 風花の消えゆき巫女の舞ひ納む
 歌留多取り時に負けん気末娘
◎寒垢離の打率三割夢見つつ
 鎮魂の海に風花消えゆけり
◎獅子舞や老いたる方が前足に
 寒垢離を終へし裸体の白き湯気
◎獅子舞に泣く子逃げる子手を打つ子
 獅子舞の優しく噛みぬ抱く子に
 六甲を越えし風花舞ふ神戸
 星見んと出れば風花ひとひら来
 過ぎてより臘梅の香と気づきけり
 風花や老の坂山より晴れて

輝子
洛艸
香月
洛艸
輝子
京子
嵐耕
言成
浩一郎
眞知子

元彦
暁子

瑛三
暁子
敏夫
眞知子
元彦
嵐耕
幹三

輝子
嵐耕
言成
浩一郎
浩風
浩一郎

林 直入 選

第505回 平成24年1月16(月)

兼題  獅子舞・寒垢離直入)薺なづな・風花(あや)
席題  卓上に 蠟梅・万両・千両・寒菊・寒椿・歌瑠多

 風花や夫逝きし日の如く舞ふ
 あれやこれ結はへ福笹撓みたる
 離れてはまた寄るふたり薺摘む
 この日だけもてはやさるるなづなかな
 薺打つ音を残して母遠し
 寒垢離の僧張りつめて貫けり
 屈託を湯船に沈め除夜の鐘
 薺摘む母の幻背戸の藪
 獅子舞の唐草の胴くねらせて
 香りたつ朝の厨の芹なづな
 風花と共に思ひ出舞ひはじむ
 風花に滲みし葉書投函す
 薺打つ夜の静寂に香と緑
◎寒垢離や水も大気も張りつめて
 風花の消えゆき巫女の舞ひ納む
 獅子舞の獅子をかつぎて畑を行く
 風花に日輪月のごときかな
 獅子舞を追うて日暮れの町はづれ
 風花や時刻表なきバスを待つ
 清々し緑と白の薺粥
◎鎮魂の海へ風花消えゆけり
 その後の善哉美味き除夜の鐘
 大き大き寒満月の窓辺かな
 里を継ぎ獅子舞息む峠かな
◎白箸に色かぐはしき薺粥
◎人に気を許さぬ目つき狩の犬
 寒垢離や一途に祈る若夫婦
 獅子舞ひの足は大地を滑りゆく
 風花や神戸の海の見える丘
◎寒垢離の邪念を拂ふ気迫充つ
 獅子舞のやさしく噛みぬ抱く子に
 寒垢離や修験者の山径険し
 寒垢離に畏怖と憧憬あるばかり
 六甲を越えし風花舞ふ神戸
 御祝儀に歯を鳴らしけり獅子頭
 宴闌けてやをら獅子舞出番かな
 過ぎてより梅の香と気づきたり
 風花の雪となりゆく湖の町
◎風花や空に生まれて空に消ゆ
 獅子舞の親子気合の合うてをり


幹三
幹三
暁子
京子
和江
京子
言成
太美子
嵐耕
暁子
暁子
香月
暁子
敏夫
ゆたか
浩風

暁子

嵐耕
元彦
京子
浩一郎
ゆたか
幹三
暁子
敏夫
幹三
太美子
嵐耕
義雄

言成
洛艸
義雄
浩風
暁子
言成
直入

長山あや 選

 獅子舞の親子気合の合うてをり
 風花の遂の行方は天か地か
 風花に開くみくじの凶にして

直入

 

選者吟

◎つまづきて泣顔となる寒さかな
◎耳すませば春の近しと川の声
 一木をまとめ冬芽の色なせる
 冬ざれや男神女神の岩の青
 堤より寒声ありて振り返る
 曲水に冬日砕けて流れゆく
 河川敷鳩と並んで日向ぼこ
 渡り廊下凍て足早に巫女の行く
 亀の井の寒の御水を味はへり
◎流木のさらされて白冬の川
 神おはします山の冬紅葉
 川の音に耳を澄ませば風花来
◎亀の井の甘露なりけり寒の水
 燦然と朝日遍き山眠る
 愛宕山その奥山も雪催ひ
 母強く子を抱き寒の宮参り
◎亀の井に含みて甘し寒の水
 立春の近し撫で亀背の丸く
 冬川原歩けば石の音のして
 冬ざれの堂に神像半ば朽ち
◎万両や唇赤き弁財天
 雪雲につと姿消す愛宕山
 神鼓打つや晴間ひろごる冬の空
◎酒醸す神とて寒き宮居かな
 天辺はこの世つきぬけ大冬木
 降り立てば底冷えじんと桂川
 昨夜の雪愛宕の山を墨絵とす
 川原には鳥の足跡焚火跡

幹三
瑛三
敏夫
幹三
幹三
京子

輝子
京子
輝子
幹三
輝子
瑛三
元彦
輝子
幹三
言成

幹三
輝子

眞知子
言成
瑛三
暁子
瑛三
敏夫
輝子

林 直入 選

第506回 〈吟行句会〉平成24年1月29(日)

吟行地 松尾大社 及び 桂川河川敷(京都市西京区)

◎雪雲も激つ流れも丹波より
 凍ててゐる巖にも神宿らるる
 山咋の神在します冬の山
 耳すませば春の近しと川の声
 餌を投ぐる子に寒鯉のめざめしや
 小雪舞ふ松尾大社に詣でけり
◎桂川千鳥止まれる白き石
 渡り廊下凍て足早に巫女の行く
◎磐座に神在すらむ冬ぬくし
◎熊笹の隈白々と寒の庭
 風花や一ノ井川と二ノ井川
 岩に神見たる人あり冬ぬくし
 緑泥の岩なる神に冬日燦
 母強く子を抱き寒の宮参り
 亀の井に含みて甘し寒の水
 乱れたる鳥の足跡冬の川
 磐座も河原の石も冬ざるる
◎冬川原歩けば石の音のして
 一杯のそばに解るる寒さかな
 寒空に石の即興詩人たち
 冬川原雲の去来の慌し
 霊亀とや少し温めの冬の水
 ひと時の冬日に指の伸び来たる
◎天辺はこの世つきぬけ大冬木

直入
直入
言成
瑛三
輝子
言成
幹三
輝子
瑛三
言成
幹三

暁子
幹三
言成
敏夫

幹三
瑛三
瑛三
暁子
敏夫
敏夫
暁子

井上浩一郎 選

 橋よりの景山脈の遠は雪
 青石の庭に冬日の弱々し
 がら空きの嵐山線寒の内
 とどろなる神鼓にせかれ寒詣
 西山に雪雲しまくらしき見ゆ
 きのふ京に見し西山の雪ならむ

直入


浩一郎

 

選者吟

アンカー

アンカー

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第505回 H24.01.16

第506回 H24.01.29

第507回 H24.02.20

第508回 H24.03.19

第509回 H24.04.16

第510回 H24.04.29

第511回 H24.05.21

第512回 H24.06.18

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第514回 H24.07.29

第515回 H24.08.20

第516回 H24.09.10

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