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新入生

今こそ大学入試制度改革を! でももちょっと待って・・・

特任准教授 George T. Sipos
大阪大学グローバルアドミッションズオフィス

george

私は自分の大学入試のことを、忘れることはないでしょう。私はその時18歳で、ひどくおびえていました。1週間半にわたる4つの試験に通らなければ、まる1年間を棒に振ることになります。さらに1993年のルーマニア・ブカレストでは、18歳の男子が大学入試に失敗することは、18ヶ月の兵役を強制されることも意味していました。人生が激変するかもしれなかったのです。私は高校を首席で修了し、数多くの学校行事やプロジェクトを立ち上げ、リーダーを経験しました。また全国の様々なコンテストに参加し、賞も取りました。しかしそんなこととは無関係に、4つの試験に残りの人生がかかっていたのです。

 

幸い私はブカレスト大学の日本語学日本語文学科に合格し、入学しました。当時もっとも威信が高く、入学難易度も高かった学科の1つです(たしか倍率は25倍くらいだったと思います)。しかし高校時代、私と同じくらい優秀だった生徒でも不合格だったり、何年も続けて不合格だった受験生もいます。このように人生の早い段階から、私はこの大学入試制度が時代遅れで、18歳で人生の成否を分けてしまうようなたった1週間の試験によって、高等教育への進学が左右されるべきではないと考えていました。今日、私が受けたような入学試験はほぼ過去の遺物となっています。

 

大阪大学をはじめとする日本の諸大学も、「スーパーグローバル大学創成支援事業」の一環として、とうとう過去と決別し、入試制度を変革する段階に達しています。米国で長年大学入試マネジメントに携わり、日本での制度変革に協力するため来日した者として、私は多くの可能性と同時に多くの乗り越えなければならない課題を感じています。

 

大きな課題の1つは、日本の大学のアドミッションズオフィスでは、米国と比べてはるかに様々な学部・研究科のニーズに応える必要があります。今日の日本の高等教育制度では、数学であれ、物理であれ、外国語であれ、ほとんど基礎知識を持たない学生を新入生として大学に迎え入れるため、各学部・研究科には非常に大きなリスクをもたらします。米国の多くの大学では2年次または3年次に専攻を選択させることから、より総合的な入試制度が可能であるのに対し、日本ではそのような制度は不可能です。そのため日本の新入試制度では欧州での事例を参考に、学校の内申書を審査する米国式の入試手続きと、SATやACTのような総合試験(これに小論文、ボランティア活動やスポーツ活動、推薦状、受験生への面接を組み合わせる)をどちらも実施する必要があるでしょう。