疲れたる小手毬の花雨纏ふ
◎城守る槍先のごと松の蕊
唐門の金色鈍し梅雨に入る
夏草に薊の一花天守跡
探幽の松生きいきと五月雨
遠景に淡きむらさき楝咲く
◎園丁の眼をのがれしや夏あざみ
天下取る野望は今も青嵐
◎散り松葉ひとつとてなし二条城
松落葉踏めば囁くごとくなり
◎傘さしておしやべり長し五月雨
薄暗き書院出づれば新樹かな
野薊の咲くやお城の奥深く
指ほどの篠の子のぞく苔の庭
梅雨入りや鶯張りの湿りたる
黒竹の筍小さき黒衣着て
万緑を従へ天守跡の黙
狩野派の絵も憂ひ帯ぶ梅雨の入り
未草音なく開く雨の池
鈍色の雨に杜鵑花の紅の彩
隅櫓かるく越えたる樟新樹
◎蕎麦つゆの少し辛目や梅雨に入る
いかめしき城門濡らす梅雨の漏り
言成
元彦
輝子
瑛三
言成
輝子
輝子
翠
道子
暁子
道子
乱
敏夫
輝子
敏夫
言成
翠
敏夫
瑛三
翠
輝子
暁子
敏夫
林 直入 選
第494回 〈吟行句会〉平成23年5月28日(土)
吟行地 二条城 およびその周辺
城濠に一尾棲むてふ大鯰
万緑や城址の磴はみんな急
鴬張り廊下は梅雨に湿りても
直入
選者吟
河鹿聞く宿の夕餉となりにけり
燕の子電線までの初飛行
◎子燕ら身を寄せ合ひて天こ盛り
きりきりと音して日除せり出しぬ
雨やんでラフの青芝いや重く
室生寺の塔に響けり昼河鹿
◎一羽巣を翔たずに鳴ける燕の子
◎青芝や幸せさうなよその家
青芝に人生論じたる事も
青芝の向うは海や市営墓地
抜け路地に佳人あらはる額の花
親よりも大き口開け燕の子
◎どくだみのはびこる庭は留守らしく
また授業抜けて集へり青芝に
◎山梔子の花に白てふ色を見し
軽きねたみ山梔子の香のうとましく
青芝に天下国家を論じをり
山梔子の白は闇より重きかな
梔子の朽ちつつ保つ香かな
山梔子の香の濃き夜や人恋し
◎夕河鹿ただ一泊の旅なれど
◎くちなしの白は束の間にぞ錆びぬ
青芝にニーチエ語りし昔かな
ゆたか
眞知子
乱
幹三
言成
京子
あや
暁子
幹三
暁子
浩風
浩風
言成
暁子
浩風
眞知子
洛艸
あや
元彦
眞知子
暁子
輝子
瑛三
林 直入 選
第495回 平成23年6月20日(月)
兼題 青芝・河鹿(直入)燕の子・山梔子の花(あや)
席題 卓上に 未央柳・十薬・夏菊・額の花・蓮の浮葉
◎青芝にボール素直に転らず
◎青芝の日ざし啄む雀かな
河鹿宿老いのよすがを頼みをり
青芝や月に濡れたる人の影
雨の日はどくだみの香の好もしく
室生寺の塔に響けり昼河鹿
◎青芝や幸せさうなよその家
家絶えて子燕育つことも絶ゆ
知らぬこと増ゆるばかりや苔の花
◎青芝に座すれば土の香も青し
父の日の鍔広帽子ひとつ来ぬ
人生を論じしことも青芝に
雨上り青芝雫もてあまし
猪名川の瀬音にかすむ河鹿かな
また授業抜けて集へり青芝に
雨の遺跡くちなしの白重たかり
青芝に天下国家を論じをり
流れ来し山梔子の香に目覚めけり
寝転びてみたき衝動芝青し
モンローと名のある薔薇の香りかな
あきらめて帰る背中に河鹿鳴く
◎父の日といふ難しき一と日かな
紫陽花や過ぎてゆく日の美しき
青芝に大の字になり雲仰ぐ
青芝にニーチエ語りし昔かな
◎青芝に子と転がりし頃のこと
昏れそめて着きたる宿の河鹿笛
夕づくや瀬音にまじる遠河鹿
子燕の鳴くや神父の戻りけり
直入
京子
和江
浩一郎
輝子
京子
暁子
輝子
和江
嵐耕
浩一郎
幹三
言成
元彦
暁子
瑛三
洛艸
言成
洛艸
京子
輝子
暁子
浩一郎
ゆたか
瑛三
乱
ゆたか
浩一郎
幹三
長山あや 選
巣立ちても大地は踏まず燕の子
雨戸締めても山梔子の香る部屋
紫陽花の色を正せし薄日射
山梔子の白は闇より重きかな
ひとり巣を翔てずに鳴ける燕の子
満天の星震はせて河鹿鳴く
直入
あや
選者吟
◎海水のしよつぱさ知らぬプールの子
◎故郷の話の尽きず洗ひ鯉
もう何もかも濡れてをり水遊
紫陽花を切りて諾ふ雨意の空
空蝉のごと脱ぎすてて生くもよし
跳び込みて水鏡割るプールかな
◎甲冑のワンピースなり蝉の殼
市民プール皆芋の子となる真昼
牛蛙鳴きやみ闇の深くなる
暑気払ひシネマで過す昼下がり
烈日に怯むことなく凌霄花
凌霄のわれにも欲しき勢かな
◎結局は呑むことになる暑気払ひ
◎声援に声をからすも暑気払ひ
朝まだき空蝉すでに乾きをり
生簀より客に掬はせ洗鯉
水貝の氷の音添へ運ばるる
暑気払ひと言うて誘ふや飲み仲間
◎葛切や水琴窟の音流れ
空蝉の残る軒端にバスを待つ
◎一匙のVSOP暑気払ひ
青汁の匂ひにも馴れ暑気払
空蝉やかつて抱きし命あり
浩風
和江
幹三
義雄
暁子
暁子
瑛三
眞知子
幹三
和江
輝子
瑛三
輝子
瑛三
敏夫
洛艸
香月
瑛三
京子
言成
あや
京子
眞知子
林 直入 選
第496回 平成23年7月11日(月)
兼題 プール・暑気払(直入)あらひ・空蝉(あや)
席題 卓上に 凌霄花・木槿・アガパンサス
声もなく夜のプールを泳ぎけり
柏手の音ひびく宮梅雨きざす
◎豪快に水主(かこ)の料する洗鯛
客来れば暑気払ひとてまづ一献
夕日浴び明日に備へる木槿垣
背を割りて空蝉のやうに服を脱ぐ
旅先は地のワイン好し暑気払
脱ぎし殻より出し蝉の大きかり
◎子ら去りて月のみ残るプールかな
◎陵の谷鳴きわたるホトトギス
空蝉や杣を継ぐ子の無口なる
宇陀よりの置薬屋の暑気払
太陽の色貰ひたる凌霄花
空蝉の登りて来たる形かな
◎跳ねし音耳朶に残してあらひ食ふ
板前の薄引の技見す洗膾
地に散りて朱の踏まるまま凌霄花
葭簀編む槌の子の音京の路地
放射能禍遠くプールの声弾け
◎あらひありこひこくもあり山の宿
空蝉の風葬を待つ軽さかな
透きとほるうす紅重ねあらひかな
お囃子にひとつ遠くの本屋まで
凌霄花塀より溢れ出たりける
浜木綿の咲く地を終の住み家とし
空蝉の眼爛々何を見る
たしかなる今を燃えをり凌霄花
隠し味はんなり京の洗鱧
◎一瞬のプールの静寂高飛込み
大皿にをどれる切身あらひ鯉
ゆたか
箕川
瑛三
洛艸
言成
箕川
義雄
直入
洛艸
道子
浩風
暁子
暁子
幹三
乱
直入
翠
京子
翠
瑛三
義雄
暁子
和江
幹三
香月
箕川
輝子
浩風
瑛三
嵐耕
長山あや 選
板前の薄引の技見す洗膾
凌霄の絶えず咲き継ぐ底力
遠慮なく咲きては落つる凌霄花
空蝉を脱ぎ渾身のうすみどり
花びらのごとひとひらのあらひかな
夜のプール月影ひとつたゆたへり
直入
あや
選者吟
◎やってみてやらせて褒めて独楽廻し
寒月に地震の記憶のさ迷へり
雪折の松の断面瑞瑞し
悴みし手を重ねくる妻のゐて
刃持つ寒さと対峙して居りぬ
悴める人を引き行く大き犬
◎雪折や耐へに耐へ来し音ならむ
寒聲の公民館の二階より
◎雪折の音山の闇真二つに
◎冬帝の花嫁のごと富士真白
賜はりし文に悴み解けゆく
論文は菅公頼み初詣
雪折や老樹に傷のまた一つ
掌へ受くに一心不乱独楽廻し
虎落笛地震の月日の鎮魂歌
悴める顔のショーウインドーにあり
悴みて易者掌をする算木摺る
◎悴みて独りの家に戻りけり
袋ごと放り込みたるどんどかな
悴む手重ね旧交暖めり
悴みてわが身わが身でなきごとく
物言ふもなんぎな程に悴みぬ
◎雪折の悲鳴谺す峡の村
◎夫引きし傍線のあり読みはじむ
浩風
あや
眞知子
義雄
香月
幹三
暁子
幹三
あや
あや
暁子
乱
瑛三
元彦
あや
浩一郎
浩風
京子
幹三
洛艸
洛艸
眞知子
言成
暁子
林 直入 選
第488回 平成23年1月17日(月)
兼題 御降・独楽(直入) 雪折・悴(あや)
席題 卓上に 水仙(黄色)
雪折の蕾める一枝惜しまるる
地震の日や悴むる手に燭点す
雪折をくぐりて嵯峨の籔の径
◎悴みし手を重ねくる妻のゐて
独楽爆ぜるためにも秘蔵の糸選ぶ
◎打ち合ひし独楽の火花や薄明かり
悴める人を引き行く大き犬
悴みて落せし錠の音響く
寒聲の公民館の二階より
◎雪折の木の枝今はの香を放つ
勝独楽の泰然自若たる誇り
◎尻尾あるものは尻尾も悴みぬ
御降りの地に落つる間に消えにけり
◎芯少しぶれゐる喧嘩独楽強し
御降りの銀世界にて金閣寺
風花や隣の屋根に鳩のゐる
静止して息つめるごと廻る独楽
◎放たれし独楽一点を澄みて舞ふ
◎喧嘩にも喧嘩独楽にも強き餓鬼
悴みて目が物を言ふ互ひかな
博多独楽忘れゐる子も父となり
御降りの秘めし力や船沈む
畳屋の仕事始めや藁匂ふ
袋ごと放り込みたるどんどかな
一と揺れに一と揺れに独楽止りたる
御降りに鎮もる金剛葛城山
本性は喧嘩独楽らし父譲り
悴みてわが身わが身でなきごとく
真新の刻始まりぬ除夜の鐘
雪折の悲鳴谺す峡の村
夫引きし傍線のあり読みはじむ
雪折れや確めてゐる子の寝息
直入
瑛三
洛艸
義雄
草机
敏夫
幹三
浩一郎
幹三
暁子
浩風
直入
和江
直入
京子
幹三
眞知子
浩一郎
直入
洛艸
京子
元彦
幹三
幹三
直入
言成
和江
洛艸
京子
言成
暁子
幹三
長山あや 選
御降に雪を賜ひし兎年
歴戦の独楽の疵跡由々しかり
雪折の蕾める一枝惜しまるる
雪折の声山の闇真二つに
冬帝の花嫁のごと富士真白
虎落笛地震の月日の鎮魂歌
直入
あや
選者吟
春隣太極拳の動きにも
寒風に大みささぎのゆらぎゐし
冬空に平和の塔の揺ぎなく
◎老いてよき顔になられし冬帽子
寒風にうねる御陵の緑濃し
大北風や陵の山揺れ揺れて
盆梅のなべて上向く勢かな
一斉に梢広げし冬芽かな
前輪の巨大自転車春隣
胎動の力を秘めて冬木立
◎寒風の通り抜けゆく躙り口
躙り口のぞけば寒気溢れゐし
ありつたけふくらみて寒雀かな
吟行に行くか休むか迷いしも
寒鯉の深きにありて身じろがず
◎出番待つレンタサイクル春近し
その樹下の苔の艶やか鉢の梅
茶室の梅僅かに咲きて香届かず
◎吟行の利休の町に風冴ゆる
児等の声あがり寒風無きごとし
太極拳に集ふ人らや春近し
◎凍蝶にこの世の音の消えてをり
さざれ石てふ椿なり葉も細か
幹三
京子
敏夫
暁子
元彦
浩風
浩風
京子
元彦
乱
輝子
輝子
浩風
ゆたか
輝子
暁子
輝子
ゆたか
乱
元彦
道子
暁子
箕川
林 直入 選
第489回 〈吟行句会〉平成23年1月30日(日)
吟行地 仁徳天皇陵、大仙公園、自転車博物館
句会場 自転車博物館研修室
冬空に大陵の抱かれて
◎寒風に大みささぎの森ゆらぐ
寒桜風に耐えゐる色ならむ
◎老いてよき顔になられし冬帽子
堀端に凍てしや鷺の身じろがず
陵を揺らしてゐたる冬の風
◎胎動の力を秘めて冬木立
寒風の通り抜けたり躙り口
聖帝の大みささぎや春近し
山嶺の動くが如く冬の雲
みささぎの水の青さよ風さむし
◎大王の墓を巡りて土静か
寒鯉の深きにありて身じろがず
御稜の冬神秘の深さありにけり
寒禽の楽園として仁徳稜
さざ波の無尽蔵なる冬の池
陵の杜常磐木凍てて乾きをり
行厨を遣ふも日向ぼこりかな
◎凍蝶にこの世の音の消えてをり
◎竹林の梢冬日を放射して
寒風におくれて寄する細れ波
乱
京子
暁子
暁子
輝子
幹三
乱
輝子
京子
幹三
箕川
幹三
輝子
京子
言成
暁子
輝子
浩風
暁子
京子
輝子
長山あや 後選
大仙陵大寒林でありしかな
寒鴉占むる御陵も公園も
寒雀日向の粒となりて翔つ
直入
選者吟
空色のランドセル買ふ浅き春
早春の土もつこりと土龍穴
早春やターナーの絵の空の色
風に乗り風より速き山火かな
◎紅梅を車椅子より差せる指
山焼いて断たるる命生ふ命
◎早春の早の字のややもどかしく
堂普請木の香梅の香競ひ合ひ
ピアノ弾く教師泣きをり卒業歌
◎人込みの鹿に躓くお山焼
山火消ゆ一陽来復期するかに
月光に白梅いよよ真白なる
道順の自づと流れ梅見茶屋
魞挿しの舟に遊覧船の波
◎焼山となれば案外低きかな
◎新しき街に残りし梅香る
春雪に足跡しるき鷺一羽
満天の星へ山火の応へをり
琴坂の小流れに聴く早春譜
春菜みなかすかな苦味滋味として
下萌えて涸れし心の潤ひぬ
◎山焼や信濃の闇も火も濃かり
早春や外に出たがるスニーカー
梅ふふむ同窓会の報せあり
輝子
浩風
眞知子
あや
幹三
言成
眞知子
敏夫
幹三
京子
洛艸
嵐耕
浩風
幹三
暁子
敏夫
京子
嵐耕
洛艸
眞知子
洛艸
あや
義雄
和江
林 直入 選
第490回 平成23年2月21日(月)
兼題 梅・早春 (直入) 山焼く・下萌(あや)
席題 卓上に 水菜・春菊・ほうれん草・菜の花(花菜)
◎下萌に話しかけたく腰下ろす
小流れの水の音にも兆す春
廃校となりし分校下萌ゆる
残雪や果せぬ古き約ひとつ
山焼いて断たるる命生るる命
夜のとばり降り焼山の火のあるる
◎山焼の終り静かな星の夜
姉は白妹は紅の梅なりき
大川の水のきらめき早春賦
白梅のうてなの色や空の青
はうれん草のスープにつなぐ命かな
早春の歩みは遅々と山湖かな
凛とした二月の大気身にまとふ
肩に掛け反物選ぶ梅日和
早春は光と風の中に在り
◎月光に白梅いよよ真白なる
ムバラクもカダフィもゆらぐ下萌えて
道順の自づと流れ梅見茶屋
魞挿しの舟に遊覧船の波
◎春菊の香り愛でつつ独り酒
焼山となれば案外低きかな
下萌のくさぐさいとし人を待つ
◎崩れたる横穴古墳草萌ゆる
白梅に偲ぶ母あり忌日来る
下萌の匂ふ土手道蕪村の碑
早春の天守の眺め川光る
偲ばるる闘病日記梅が香に
◎大地いま下萌ゆるもの押し出しぬ
紅梅の紅引き落つる雨雫
白に個性緑に個性なき春菜
末黒野の利根に大きく日の落つる
空色のランドセル買ふ浅き春
◎山焼きて風のよるべを失へり
早春の土もつこりと土竜穴
浩一郎
眞知子
浩風
浩一郎
言成
暁子
直入
箕川
言成
京子
暁子
瑛三
暁子
嵐耕
乱
嵐耕
箕川
浩風
幹三
言成
暁子
太美子
敏夫
太美子
京子
京子
嵐耕
眞知子
香月
直入
和江
輝子
暁子
浩風
長山あや 後選
見馴れたる梅なれどまた佇ちにけり
山焼の終り静かな星の夜
何植ゑてありし鉢かや下萌ゆる
山焼きや信濃の闇も火も濃かり
風に乗り風より速き山火かな
濃紅梅水の音にも散る日和
直入
あや
選者吟
出町柳より芽柳の道となる
川風に芽柳ひかりもて応ふ
春の雨空重からず軽からず
膝痛の医師も手こずり二日灸
大地震を知るや知らずや鳥帰る
芽柳のゆれて小さき風生れぬ
鳥雲に鯖街道を逆行す
◎香をきけばやはり紫花すみれ
◎野におけと思へどやはり摘む菫
芽柳や背に小踊りのランドセル
食卓に春を盛らんと買物に
◎薄緑かさねかさねて春の雨
どこからか丹波は丹後山笑ふ
国原の空傾けて鳥帰る
柳の芽ふくらむ枝のまだ軽く
鳴き交し帰り忘れし鴨の群
生命永願ひて耐ゆる二日灸
◎春の雨庭木も草も黙したり
ピアノ洩れ伶人町に春の雨
◎子の雛五十五年の月日かな
信ずればこその効能二日灸
順調に老いしと思ふ二日灸
鳥帰るゆつくり廻る観覧車
◎釣れるかと問へば数多の子持鯊
鳥帰る下に還らぬ島四つ
春雨の音なき音や午睡へと
乱
あや
瑛三
義雄
乱
眞知子
浩風
言成
眞知子
浩風
暁子
瑛三
幹三
あや
言成
元彦
香月
乱
香月
京子
浩風
輝子
眞知子
幹三
浩風
眞知子
林 直入 選
第491回 平成23年3月14日(月)
兼題 二日灸・芽柳 (直入) 鳥帰る・春雨(あや)
席題 卓上に 菜の花・菫
鳥帰る群れにおくれし番ひかな
妻と見し日のこと冬の虹美し
菜の花の黄に照らさるる句会かな
津波あと春泥なんてものじゃない
大地震を知るや知らずや鳥帰る
ころころと母よく笑ふ二日灸
◎香をきけばやはり紫花すみれ
芽柳をくぐり疎水の十石舟
春雨に濡れるもよしと先斗町
日暮るるを湖北明るき花菜畑
◎頼られて頼りて二人二日灸
大川の川面けぶれる春の雨
芽柳や背に小踊りのランドセル
◎春雨にかたまりをりしものゆるぶ
薄緑かさねかさねて春の雨
がまん終へふつと息吐く二日灸
はかどらぬ身辺整理春の雨
渡月橋暮るる真上を鳥帰る
生命永願ひて耐ゆる二日灸
鳴き交し帰り忘れし鴨の群れ
地震の地に鳥引き人ら翼なく
◎さほどでもなきに相傘春の雨
本能も才能のうち鳥帰る
無量寺の看板目立つ二日灸
鳥帰るヒツチコツクといふ鬼才
比良八荒湖見る墓の低き列
芽柳の日ごとに伸びる頃が好き
湯に沈み春の雨聞く独居かな
◎芽柳の糸を束ねて色となり
そちこちに見送りの人鶴帰る
桜餅日々好日の余生かな
七十路の終りの年の雛飾る
◎春雨や産湯の記憶甦へる
鳥帰る下に還らぬ島四つ
◎二日灸艾手毬にしてありし
義雄
草机
言成
暁子
乱
輝子
言成
洛艸
義雄
瑛三
輝子
嵐耕
浩風
眞知子
瑛三
眞知子
暁子
洛艸
香月
元彦
翠
洛艸
眞知子
言成
眞知子
和江
言成
翠
敏夫
元彦
義雄
京子
暁子
浩風
直入
長山あや 選
二日灸艾手毬にしてありし
どの竿も魚信の乏し芽の柳
日本語に馴染む間もなく鳥帰る
国原の空傾けて鳥帰る
川風に芽柳ひかりもて応ふ
春雨やほたほたと降りはたと止み
直入
あや
選者吟
石垣をなだれ落ち行く芝桜
芝桜足になじみしスニーカー
◎焼蛤申し合はせしやうに開き
◎蜂の巣の育つを眺めゐるうちに
鳩も鯉もパンの耳食ふ日永かな
日永とはかゝる一と日や壬生舞台
長篇の世界に浸る日永かな
妻庭に我は書斎に永き日を
地蜂の巣採るは秘伝と信濃人
小さくとも蛤なるぞ椀澄めり
名苑の遅日庭師のまだ去なず
◎かたづけはまず捨てること暮遅し
永き日やいまひるの月出てをりぬ
ひとゆらぎ蛤やをら口ひらく
◎落されて蜂の巣あはれ軽きこと
◎我待つ人なくて遅日の家路かな
ぬか雨にしだれけぶる黄濃山吹
石垣に溢れこぼれて芝桜
乗り継いで時差を正して旅日永
久久の電話長びく日永かな
◎幾度も庭に出て見る日永かな
日の永し耳疎きゆゑなほ永し
永き日と言ふも我が持つ時短か
◎落されし巣を離れざる蜂あまた
落されし蜂の巣去らぬ蜂二匹
敏夫
眞知子
洛艸
あや
幹三
瑛三
暁子
乱
瑛三
元彦
太美子
眞知子
ゆたか
輝子
輝子
翠
嵐耕
輝子
義雄
京子
道子
暁子
箕川
眞知子
元彦
林 直入 選
第492回 平成23年4月18日(月)
兼題 日永・芝桜(直入) 蜂の巣・蛤(あや)
席題 卓上に 山吹・木瓜(更紗木瓜)
口下手の男蛤売つてをり
廃線の駅に残れる芝桜
焼蛤申し合はせしやうに開き
泥猫のすごすご戻る日永かな
花の闇余震余震に明けやらず
◎鳩も鯉もパンの耳食ふ日永かな
音もなく気付けば蜂の巣の育ち
島日永郵便船の着くは四時
◎芝桜その海原を吾子の行く
長篇の世界に浸る日永かな
妻庭に我は書斎に永き日を
山の端に昇りし望の月おぼろ
句の道にいそしむ余生青き踏む
地蜂の巣採るは秘伝と信濃人
蜂の巣の六角部屋の神秘かな
逝く春や震災の惨そのままに
蛤の真夜に砂吐く厨かな
蜂の巣の軒の死角で育ちゆく
寂しくも生きるほかなし永き日を
◎ひとゆらぎ蛤やをら身をひらく
夕闇の滲みて来たり芝桜
芝桜大地の息吹染めあげぬ
我待つ人なくて遅日の家路かな
蜂の巣のからびいつまで空家なる
◎蛤の聴きしは海の挽歌かな
◎芝桜昭和の団地古りにけり
幾度も庭に出て見る日永かな
蛤の殻に膏薬いれてあり
◎日の永し耳疎きゆゑなほ永し
永き日と言ふも我が持つ時短か
幹三
直入
洛艸
和江
和江
幹三
眞知子
直入
敏夫
暁子
乱
言成
義雄
瑛三
京子
道子
京子
眞知子
暁子
輝子
暁子
眞知子
翠
浩風
瑛三
直入
道子
輝子
暁子
箕川
長山あや 選
池遅日乏しき釣果飽きもせず
派手好きな女主や芝桜
小家族なりし脚長蜂の巣は
蜂の巣の育つを眺めゐるうちに
蛤の笛ほうほうと海を呼ぶ
思ひ出が思ひ出を呼び暮れなづむ
直入
あや
選者吟
鳥も吾も紅さすを待つさくらんぼ
ああうんの猫背の二人袋掛
四代の履物並び子供の日
いただきし筍飯にお焦げなく
袋掛一茶の里のりんご畑
◎隣席のクリームパフエ子供の日
怪我の子の一人窓辺に子供の日
温かき筍飯も道の駅
豌豆がつんでくれろと揺れて居り
灯しても真夜の葉桜恐ろしき
◎家苞のこの筍の重きこと
◎葉桜やわが学舎の既になし
葉桜となりて鎮もる忠魂碑
葉桜の哲学の道閑かなり
葉桜にまた立ち返る静心
葉桜や陀羅尼助練る吉野郷
袋掛てふもほまちの小半日
◎宴果つ筍飯を褒め合ひて
袋掛終へ静もりぬ葡萄畑
葉桜や老婆一人で足る茶店
◎料亭の筍飯のちんまりと
◎挨拶もなく筍の置かれゐし
大切りの筍めしや鄙の宿
枝にすがりつきて明日待つさくらんぼ
葉桜となりて懐深き蔭
夕日背に最後の一枝袋掛
◎葉桜にトラツク巨体休めあり
壮年期とは葉桜に似たるかな
葉桜や綽名決まりし新教師
月命日筍飯に念入れて
輝子
浩風
浩風
元彦
瑛三
京子
輝子
敏夫
道子
あや
道子
道子
洛艸
乱
乱
浩風
浩風
言成
輝子
洛艸
眞知子
道子
あや
暁子
浩風
洛艸
暁子
あや
浩風
京子
林 直入 選
第493回 平成23年5月16日(月)
兼題 袋掛・子供の日(直入)葉桜・筍飯(あや)
席題 卓上に 柏餅・粽・さくらんぼ
鳥も吾も紅さすを待つさくらんぼ
葉桜や颯爽としてたゞ黙し
呑舟の鯉泳がせて子供の日
葉桜の下で酒酌む一興や
袋掛一茶の里のりんご畑
海よりの風も入れつつ袋掛
葉桜の風に安らぐ真昼かな
葉桜や振り捨てしものあれやこれ
葉桜の中の大空真青にて
◎郭公やいよよ捨つるか古き椅子
葉桜の木蔭に休む犬と人
袋掛も原発事故も人為なり
◎葉桜となりて鎮もる忠魂碑
葉桜の哲学の道閑かなり
母残し五月の空へ飛び立ちぬ
代掻や近江の国のちぎれ雲
葉桜の蔭に舫ひし十石舟
◎地震跡の空に主(ぬし)なき鯉のぼり
◎葉桜にまた立ち返る静心
粽解きつつ少年の語り出す
葉桜や漁再開ににぎはひて
葉桜に前を見据ゑる心あり
料亭の筍飯のちんまりと
◎挨拶もなく筍の置かれゐし
息入れてふくらみたるを袋掛
◎葉桜となりて懐深き蔭
新緑に吸ひ込まれたる競べ馬
閑居して筍飯の膳に就く
吾がために絵本えらびし子供の日
袋掛の景飛んでゆく車窓かな
葉桜や瓦礫残して時進む
輝子
ゆたか
箕川
ゆたか
瑛三
暁子
京子
眞知子
ゆたか
和江
言成
翠
洛艸
乱
暁子
幹三
洛艸
京子
乱
暁子
和江
乱
眞知子
道子
幹三
浩風
乱
箕川
輝子
京子
翠
長山あや 選
新品種心許なき袋掛
無農薬なれば入念袋掛
ロボツトの欲しいと思ふ袋掛
灯しても真夜の葉桜恐ろしき
壮年期とは葉桜に似たるかな
大切りの筍めしや鄙の宿
直入
あや
選者吟
●項目をクリックすると
各句回にジャンプします