OSAKA UNIVERSITY GUIDEBOOK 2015
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4種類の芳香族分子をグラファイト表面上に並べてできる二次元パターンのSTM像 近年、クリーンな電気エネルギーが望まれています。その最有力候補が、無限に降り注ぐ太陽の光から電気を作る太陽電池エネルギー。この太陽電池をもっと簡単に、安価に作るための研究が進められています。なかでも、有機物から作る太陽電池が、“塗って作れる”太陽電池として注目されています。 本研究科の電気電子情報工学専攻は、世界で初めてプラスチックの太陽電池を提案。現在では、フタロシアニンという有機分子から、“塗って作れる”高性能太陽電池を作ることに成功しました。フタロシアニンは、新幹線車体の塗装やCD-Rの光記録材料としても使われている、たいへん丈夫で安価な材料。さらに、分子が自身の力で勝手に並んでくれる「自己組織性」も持っています。将来、ペンキを塗るだけで自発的に太陽電池機能を得ることが可能になるかもしれません。 有機物は素晴らしい可能性を秘めています。有機物のエレクトロニクスへの応用により、自然環境に負荷をかけることなく、今よりもっと素晴らしい性能のデバイスや夢の電子装置の開発を目指しています。 分子の構造を設計することによって、固体表面に分子を規則正しく配列させることができます。この二次元超分子化学とよばれる科学は、合成化学と物理的計測の連携によってはじめて可能になる学際的分野です。このアプローチのゴールは究極の表面パターニングであり、テーラーメード触媒や規則的な二次元ポリマーのような新しい化学物質を作るための基盤になるだけでなく、配列された分子がもつ機能を集積することにより、エネルギー変換材料などの超分子エレクトロニクスデバイスへの応用も期待されます。分子の配列は走査型トンネル顕微鏡(STM)という装置を用いて、あたかも見てきたかのように可視化することができます。右の図は4種類の芳香族分子をグラファイト表面上に並べてできる二次元パターンのSTM像です。さまざまな分子間力が共同的に働くことで分子がその形と大きさに最適な居場所を見出だし、このように規則的な幾何学模様が形成されます。分子の”気持ち”を理解しながらデザインする楽しさと、自然の摂理の奥深さを感じる研究です。自然にやさしい“塗って作れる”高性能太陽電池。分子の“気持ち”を理解し、自然の摂理の奥深さを感じる。■Topics■Topics各研究科資料のご請求方法は各研究科のホームページをご覧ください。資料請求はこちらホーム > 学部・大学院・施設 > 大学院 > 各研究科パソコンから基礎工学研究科大学院工学研究科大学院個性豊かで創造的な研究者・技術者を育成するため、高度な専門教育と最先端の研究が行える環境を整備。本研究科に所属する教員だけでなく、超精密科学研究センターやフロンティア研究センター、産業科学研究所等の学内他部局や学外からも優秀な教員を迎え、活発な指導と共同研究が行われています。科学技術の発展を担う、先端的な研究機関。物理と化学の両面からアプローチする物質創成、バイオエンジニアリングとメカニクスを融合した機能創成、文理融合も志向するシステム創成。これら3専攻を基軸に「科学する心」と「技術への強い関心」を失わない先端的研究を推進。人文社会学系や医歯薬学系も視野に入れ、新たな学問領域の創成を目指しています。あらゆる学問分野の枠を超え、未来の技術を創造する。物質創成システム創成機能創成応用化学知能・機能創成工学精密科学・応用物理学マテリアル生産科学環境・エネルギー工学電気電子情報工学生命先端工学機械工学ビジネスエンジニアリング地球総合工学大学院・研究科紹介プラスチックに"塗って"作った曲がる太陽電池。顕微鏡で見ると分子が自発的に並んでできたドメイン(領域)模様が見える。50

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