○大阪大学における公正な研究活動の推進に関する規程
(趣旨)
第1条 この規程は、大阪大学(以下「本学」という。)が社会から負託された学術・文化の発展と高度人材教育を通じて人類福祉に貢献するため、公正な研究活動を推進し、研究活動における不正行為を防止するとともに、不正行為に起因する問題が生じた場合に適切かつ迅速に対処するために必要な事項を定めるものとする。
(定義)
第2条 この規程において「不正行為」とは、ねつ造、改ざん、盗用、二重投稿、不適切なオーサーシップ等、研究活動上の不適切な行為であって、科学者の行動規範及び社会通念に照らして研究者倫理からの逸脱の程度が甚だしいものをいう。
(1) ねつ造 存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
(2) 改ざん 研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
(3) 盗用 他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解又は適正な表示なく流用すること。
3 この規程において「研究者等」とは、本学において研究活動に従事する教職員、学生その他本学の施設を利用して研究を行う者をいう。
4 この規程において「部局」とは、各学部、各研究科、附属図書館、各附属病院、各附置研究所、各学内共同教育研究施設、各全国共同利用施設その他これらに相当する組織をいう。
(研究者等の責務)
第3条 研究者等は、不正行為を行ってはならない。また、他者による不正行為の防止に努めなければならない。
2 研究者等は、研究者等に求められる倫理規範を修得させるための教育(以下「研究倫理教育」という。)を受けなければならない。
3 研究者等は、研究活動の正当性の証明手段を確保するとともに、第三者による検証可能性を担保するため、実験・観察記録ノート、実験データその他の研究資料等を一定期間適切に保存・管理し、開示の必要性及び相当性が認められる場合には、これを開示しなければならない。
4 前項の研究資料等の保存期間及び管理の方法等については、別に定める。
(統括責任者)
第4条 本学に統括責任者を置き、研究を担当する理事をもって充てる。
2 統括責任者は、研究倫理の向上及び不正行為の防止等に関し、本学を統括する権限と責任を有する者として、公正な研究活動を推進するために適切な措置を講じるものとする。
3 統括責任者は、前項に定めるほか、本学における研究活動の不正行為への対応等に関し、体制の整備、申立てへの対応及び調査についての責任者として実施に当たる。
(部局長の責務)
第5条 各部局の長は、当該部局において、公正な研究活動の推進及び不正行為を抑止する環境の整備に努めなければならない。
2 各部局の長は、第9条第3項に定める窓口及び当該部局における研究活動の不正行為への対応等に係る責任者となる。
(研究倫理教育責任者の設置)
第6条 各部局に、研究倫理教育責任者を置く。
2 研究倫理教育責任者は、部局の長をもって充てる。
3 研究倫理教育責任者は、研究者等に対し定期的に、当該部局における研究分野の特性に応じた研究倫理教育を受けさせなければならない。
4 各部局に、必要に応じて研究倫理教育副責任者を置き、研究倫理教育の実質的な実施責任者とすることができる。
5 研究倫理教育の実施に際し必要な事項は、別に定める。
(研究公正委員会)
第7条 本学に、公正な研究活動を推進するとともに、研究者等による不正行為に対処するため、研究公正委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、次の各号に掲げる者をもって組織する。
(1) 統括責任者
(2) 総長が指名する教員 5名以上
(3) 学外有識者 若干名
(4) 法律専門家 若干名
(5) その他委員会が必要と認めた者
3 委員会に委員長を置き、前項第1号の委員をもって充てる。
4 前項各号に規定する委員は、総長が委嘱する。
6 前項の委員は、再任を妨げない。
(委員会の任務)
第8条 委員会は、次の各号に掲げる事項を行う。
(1) 公正な研究活動の推進に係る啓発活動(研究倫理教育責任者に対する研究倫理教育を含む。)に関すること。
(2) 公正な研究活動の推進に係る情報収集及び周知に関すること。
(3) 研究者等の特定不正行為に関する申立ての受付、調査及び認定に関し必要な事項
(4) その他公正な研究活動の推進及び不正行為への対処に関し必要な事項
(窓口の設置)
第9条 本部事務機構及び部局に、特定不正行為に関する申立て及び情報提供(不正行為が行われようとしている、又は不正行為を求められている旨の相談を含む。)並びにこの規程にかかわる相談、照会等に対応するための窓口を設置するものとする。
2 本部事務機構における窓口は、研究推進部研究推進課とする。
3 部局における窓口は、部局において定める。
(特定不正行為の疑いの申立て)
第10条 特定不正行為の疑いが存在すると思料する者は、前条の窓口に対し、調査を申し立てることができる。
3 第1項の申立ては、原則として、特定不正行為を行ったとする研究者・グループ、特定不正行為の態様等、事案の内容が明示され、かつ不正とする科学的な合理性のある理由が示されているもののみを受け付けるものとする。
5 第2項の規定にかかわらず、匿名による申立てがあった場合、申立ての内容に応じ、顕名の申立てがあった場合に準じて取り扱うことができるものとする。
6 新聞等の報道機関、研究者コミュニティ又はインターネット等により、特定不正行為の疑いが指摘された場合は、特定不正行為を行ったとする研究者の氏名、特定不正行為の態様その他事案の内容が明示され、かつ、不正とする合理的理由が示されている場合に限り、これを匿名の申立てに準じて取り扱うことができるものとする。
(窓口の職員の義務)
第11条 申立ての受付に当たっては、窓口の職員は、申立てを行った者(以下「申立者」という。)の秘密の遵守その他申立者の保護を徹底しなければならない。
2 窓口の職員は、申立てを受け付ける際には、その内容を他の者が同時及び事後に見聞きできないよう必要な措置を講ずる等適切な方法によらなければならない。
(秘密保護義務)
第12条 この規程に定める業務に携わるすべての者は、業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。本学の職員等でなくなった後も、同様とする。
2 委員会の委員長は、申立者、被申立者、申立て内容及び調査経過について、調査結果の公表に至るまで、申立者及び被申立者の意に反して外部に漏えいしないよう、これらの秘密を徹底しなければならない。
(申立者の保護)
第13条 部局の長は、申立てを行ったことを理由とする当該申立者の職場環境の悪化や差別待遇が起きないよう適切な措置を講じなければならない。
2 本学の職員等は、単に申立てを行ったことを理由として、当該申立者に対して不利益な取扱いをしてはならない。
3 総長は、悪意に基づく申立てであることが判明しない限り、単に申立てを行ったことをもって当該申立者に不利益な措置を行ってはならない。
(被申立者の保護)
第14条 本学の職員等は、単に申立てがなされたことのみをもって、被申立者に対して不利益な取扱いをしてはならない。
2 総長は、被申立者に対して、単に申立てがなされたことのみをもって、不利益な措置を行ってはならない。
(悪意に基づく申立て)
第16条 何人も、悪意に基づく申立てを行ってはならない。この規程において、悪意に基づく申立てとは、被申立者を陥れるため若しくは被申立者の研究を妨害するため等、専ら被申立者に何らかの不利益を与えること又は本学若しくは被申立者が所属する部局等に不利益を与えることを目的とする申立てをいう。
2 総長は、悪意に基づく申立てであったことが判明した場合は、当該申立者の氏名の公表、処分、刑事告発その他必要な措置を講じることができる。
(資料等の保全)
第17条 部局の長は、第10条第1項の申立てがあった場合において必要があると認めるときは、調査等の適正かつ円滑な実施を確保するため、証拠となるべき資料等の保全その他の必要な措置をとるものとする。
(予備調査)
第18条 委員会の委員長は、第10条第4項の報告を受けた場合は、速やかに委員会の委員長及び最も関連する部局の長並びに委員会の委員長が必要と認めた者による予備調査を行う。
2 予備調査においては、申立者からの事情聴取又は申立てに係る書面に基づき、通報内容の合理性及び調査実施の可能性について調査するほか、必要に応じて調査対象の研究者等(以下「対象研究者」という。)からの事情聴取を行うことができる。
3 委員会の委員長は、予備調査の結果を踏まえ、第10条第4項の報告を受けた日から原則として30日以内に本調査を行うか否かを決定する。
4 委員会の委員長は、特定不正行為以外の不正行為の疑いに関する申立て又は相談があったときは、必要に応じて、予備調査の実施及び適切な対応を指示することができる。
5 委員会の委員長は、本調査を実施しない場合は申立者にその旨の通知を行い、本調査の実施を決定した場合には、総長にその旨を報告するとともに、申立者及び対象研究者並びに関連する部局の長にその旨を通知するものとする。
6 総長は、前項の報告を受けた場合には、文部科学省にその旨を報告するとともに、調査対象に係る研究に競争的資金が配分され、又は配分が予定されているときは、当該競争的資金の配分機関(以下「配分機関」という。)に対し、その旨を報告するものとする。
(本調査委員会)
第19条 委員会は、本調査の実施が決定されたときは、原則として30日以内に当該事案に係る本調査委員会を設置する。
2 本調査委員会は、次の各号に掲げる委員をもって組織する。
(1) 第7条第2項第2号に掲げる者のうちから委員会で選出された者 1名
(2) 最も関連する部局の長又は当該部局から選出された者 1名
(3) 学外有識者 若干名
3 前項第3号の委員の数は、本調査委員会の委員の総数の半数以上でなければならない。
4 第2項各号に掲げる委員(以下「調査委員」という。)は、申立者及び対象研究者と直接の利害関係を有しない者でなければならない。
5 本調査委員会に委員長を置き、調査委員のうちから互選する。
6 調査委員は、総長が委嘱する。
7 調査委員の任期は、1年とする。ただし、1年を超えて調査を実施する場合は、調査が終了するまでの間、任期を延長することができる。
8 調査委員に欠員が生じた場合の後任者の任期は、前任者の残任期間とする。
9 委員会は、調査委員の氏名及び所属を申立者及び対象研究者に通知するものとする。これに対し、申立者及び対象研究者は、通知を受けた日から7日以内に、書面により、委員会に対し理由を添えて異議申立てを行うことができる。
10 委員会は、異議申立てにより調査委員を交代したときは、その旨を申立者及び対象研究者に通知する。
(本調査)
第20条 本調査委員会は、第17条の規定により保全された資料等及び必要に応じて収集した資料等に基づき、次に掲げる方法により、特定不正行為の有無及び内容について本調査を実施する。
(1) 調査の申立者、対象研究者、その他関係者からの証言の聴取
(2) 実験ノート、実験記録その他データ等の各種資料の精査
(3) 研究報告の原稿、発表記録等の精査
(4) 対象となる研究資金の精査
(5) 調査記録の作成
(6) その他適正な調査のため必要な方法
2 本調査において、必要と認めるときは、対象研究者に対し、再実験等の方法によって再現性を示すことを求めることができる。
3 本調査においては、対象研究者に対し、書面又は口頭による弁明の機会を与えなければならない。
4 本調査委員会は、本調査委員会設置の日から原則として120日以内に、特定不正行為の有無及び内容について調査を終了し、その判断結果を委員会に報告するものとする。
5 本調査委員会は、調査によって得られた物的・科学的証拠、証言、対象研究者の自認等の諸証拠を基に、特定不正行為の有無を総合的に判断するものとする。
6 本調査委員会は、保存すべき期間内の実験ノート、実験記録その他データ等の各種資料が存在しないなど、本来存在するべき基本的な要素の不足により、対象研究者が特定不正行為の疑いを覆すに足る証拠が示せないときは、特定不正行為があったと判断することができる。
(専門調査)
第21条 本調査委員会は、本調査の実施に際し、必要に応じて、第18条の予備調査を実施した部局の長に対し、当該事案に係る必要な調査(以下「専門調査」という。)の実施を求めることができるものとする。
3 本調査委員会は、当該部局において専門調査を実施することが困難であると判断した場合には、当該部局と関連する部局の長に対し、専門調査の実施を依頼することができる。
5 当該部局の長は、前項に定める期限内に専門調査を終了することができないおそれがある場合には、当該期限までに、その旨を記載した理由書を本調査委員会の委員長に提出し、その承認を得なければならない。
(調査における研究又は技術上の情報の保護)
第22条 本調査及び専門調査に当たっては、調査対象における公表前のデータ、論文等の研究又は技術上秘密とすべき情報が、調査の遂行上必要な範囲外に漏えいすることのないよう、十分に配慮するものとする。
(審査及び認定)
第23条 委員会は、本調査の結果に基づき、不正行為の有無について審査し、その認定を行う。
3 委員会は、申立てが悪意に基づくものであると判断したときは、その旨の認定を行うものとする。
4 前項の認定を行うに当たっては、申立者に対し、書面又は口頭による弁明の機会を与えなければならない。
6 委員会は、第1項の認定の結果を申立者及び対象研究者に通知するものとする。
7 総長は、特定不正行為であると認定した旨の報告を受けたときは、文部科学省及び配分機関に報告するものとする。
(異議申立て)
第24条 不正行為を行った旨の認定を受けた対象研究者は、その通知を受けた日から14日以内に、委員会に対して異議申立てを行うことができるものとする。
2 申立てが悪意に基づくものと認定された申立者は、その認定について、前項の例により、異議申立てを行うことができる。
3 委員会は、前2項の異議申立てについて再調査が必要であると認めたときは、本調査委員会に対し、再調査の実施を指示するものとする。この場合において、必要に応じて調査委員を交代させることができる。
4 委員会は、第1項の異議申立てがあったときは、総長に報告するとともに、申立者に通知するものとする。
5 総長は、当該異議申立てが特定不正行為を行った旨の認定に対するものであるときは、文部科学省及び配分機関に報告するものとする。
6 前2項の規定は、異議申立てを却下した場合及び再調査の指示を行った場合にも適用する。
7 本調査委員会は、原則として再調査開始の日から50日以内に当該調査を終了し、結果を委員会に報告するものとする。
9 委員会は、前項の審査結果を総長に報告するとともに、申立者及び対象研究者に通知するものとする。
10 総長は、第1項の異議申立てが特定不正行為の認定に対するものであったときは、審査結果を文部科学省及び配分機関に報告するものとする。
(調査結果の公表)
第25条 統括責任者は、特定不正行為が認定された場合は速やかに調査結果を公表するものとする。
2 前項の公表における公表内容は、特定不正行為に関与した者の氏名及び所属、特定不正行為の内容、本学が公表までに行った措置の内容、本調査委員会委員の氏名及び所属、調査の方法及び手順等を含むものとする。
3 前項の規定にかかわらず、特定不正行為があったと認定された論文等が、申立てがなされる前に取り下げられていたときは、当該特定不正行為に関与した者の氏名及び所属を公表しないことができる。
4 特定不正行為が行われなかったとの認定がなされた場合は、原則として、調査結果は公表しない。ただし、調査事案が外部に漏えいしていた場合又は論文等に故意によるものでない誤りがあった場合はこの限りでない。
5 統括責任者は、悪意に基づく申立てが行われたとの認定がなされた場合には、申立者の氏名及び所属、悪意に基づく申立てと認定した理由、本調査委員会委員の氏名及び所属、調査の方法及び手順等を公表する。
(論文等の取下げ等の勧告)
第27条 統括責任者は、特定不正行為が認定された対象研究者に対して、当該特定不正行為と認定された論文等の取下げ、訂正その他の措置を勧告するものとする。
2 統括責任者は、対象研究者が前項の勧告に応じない場合は、必要な措置をとることができる。
(処分)
第28条 総長は、本調査の結果、不正行為が行われたと認定された場合は、当該不正行為に関与した者に対して、就業規則その他の規定に従い、処分を課すものとする。
2 総長は、前項の処分が特定不正行為に対するものであるときは、文部科学省及び該当する配分機関に対して、当該処分の内容等を通知する。
(是正措置等)
第29条 委員会は、本調査の結果、不正行為の存在が確認された場合は、当該部局の長に対し、次に掲げる事項について適切な措置を講ずべきことを指示するものとする。
(1) 対象研究者への倫理教育
(2) 研究組織、研究環境及び研究指導体制の問題点の見直し
(3) その他不正行為の再発防止のために必要な事項
(雑則)
第30条 この規程に定めるもののほか、公正な研究活動の推進等に関し必要な事項は、別に定めることとし、定めのないものについては、研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日文部科学大臣決定)を適用する。
附則
この規程は、平成18年10月1日から施行する。
附則
この改正は、平成19年10月1日から施行する。
附則
この改正は、平成21年4月1日から施行する。
附則
この改正は、平成22年4月20日から施行する。
附則(抄)
(施行期日)
1 この改正は、平成24年4月1日から施行する。
附則(抄)
(施行期日)
1 この改正は、平成25年10月1日から施行する。
附則
1 この改正は、平成27年4月1日から施行する。
2 改正後の規定は、平成27年4月1日以後に受理された申立てについて適用し、同日前に受理された申立てについては、なお従前の例による。
附則
この改正は、平成28年4月1日から施行する。
附則
この改正は、平成30年4月1日から施行する。
附則
この改正は、平成31年5月1日から施行する。
附則
(施行期日)
1 この改正は、令和2年4月1日から施行する。
(大阪大学における研究活動の特定不正行為の予備調査及び本調査に関する細則の廃止)
2 大阪大学における研究活動の特定不正行為の予備調査及び本調査に関する細則(平成18年9月20日制定)は、廃止する。
(経過措置)
3 改正後の規定は、令和2年4月1日以後に受理された申立てについて適用し、同日前に受理された申立てについては、なお従前の例による。
附則
この改正は、令和3年4月30日から施行する。
附則
この改正は、令和6年7月30日から施行する。