○大阪大学におけるヒトES細胞の使用に関する規程

(目的)

第1条 この規程は、ヒトES細胞の使用に関する指針(平成31年文部科学省告示第68号。以下「指針」という。)に基づき、大阪大学(以下「本学」という。)においてヒトES細胞を使用した基礎的研究を行うに当たり、生命倫理上の観点から遵守すべき基本的な事項を定め、もって本学におけるヒトES細胞の使用について、倫理的及び科学的観点から適正な実施を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 胚 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年法律第146号。以下「法」という。)第2条第1項第1号に規定する胚をいう。

(2) ヒト胚 ヒトの胚(ヒトとしての遺伝情報を有する胚を含む。)をいう。

(3) 人クローン胚 法第2条第1項第10号に規定する人クローン胚をいう。

(4) ヒトES細胞 ヒト胚から採取された細胞又は当該細胞の分裂により生ずる細胞であって、胚でないもののうち、多能性(内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞に分化する性質をいう。)を有し、かつ、自己複製能力を維持しているもの又はそれに類する能力を有することが推定されるものをいう。

(5) 分化細胞 ヒトES細胞が分化することにより、その性質を有しなくなった細胞をいう。

(6) 生殖細胞 始原生殖細胞から精子又は卵子に至るまでの細胞をいう。

(7) 樹立 特定の性質を有する細胞を作成することをいう。

(8) 分配機関 他の機関から寄託されたヒトES細胞(基礎的研究の用に供するものに限る。)を第三者に分配する業務を実施する機関をいう。

(9) 使用機関 ヒトES細胞を使用して基礎的研究を行う機関(使用部局及び海外機関を除く。)をいう。

(10) 使用部局 各研究科、各学部、各附属病院、各附置研究所、各学内共同教育研究施設、各全国共同利用施設その他これらに相当する組織のうち、ヒトES細胞を使用して基礎的研究を行う部局をいう。

(11) 臨床利用機関 法令に基づき、医療(臨床研究及び治験を含む。以下同じ。)に用いることを目的としてヒトES細胞を使用する機関(海外機関を除く。)をいう。

(12) 海外機関 外国において基礎的研究又は医療に用いることを目的としてヒトES細胞を使用する機関をいう。

(13) 使用計画 使用部局が行うヒトES細胞の使用に関する計画をいう。

(14) 使用責任者 使用部局において、ヒトES細胞の使用を総括する立場にある者をいう。

(15) 研究者等 使用責任者の監督の下で使用部局において、ヒトES細胞を取り扱う研究者及び技術者をいう。

(16) ヒトES細胞を取り扱う者 使用責任者及び研究者等をいう。

(ヒトES細胞に対する配慮)

第3条 ヒトES細胞を取り扱う者は、ヒトES細胞が、人の生命の萌芽であるヒト胚を滅失させて樹立されたものであること及び全ての細胞に分化する可能性があることに配慮し、誠実かつ慎重にヒトES細胞を取り扱わなければならない。

(使用の要件)

第4条 本学におけるヒトES細胞の使用は、次に掲げる要件に適合する場合に限り、行うことができる。

(1) 次のいずれかに資する基礎的研究を行うものであること。

 ヒトの発生、分化及び再生機能の解明

 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発

(2) ヒトES細胞を使用することが前号に定める研究において科学的合理性及び意義を有すること。

2 人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞の使用は、特定胚の取扱いに関する指針(平成31年文部科学省告示第31号)第6条第2項に規定する目的に限り、行うことができるものとする。

3 本学において使用されるヒトES細胞は、次に掲げるものに限るものとする。

(1) ヒトES細胞の樹立に関する指針(平成31年文部科学省・厚生労働省告示第4号。以下「樹立指針」という。)で定める要件を満たして樹立されたヒトES細胞(生殖細胞の作成を行う場合には、生殖細胞の作成を行うことについてのインフォームド・コンセントを受けていることその他の樹立指針で定める要件を満たして樹立されたヒトES細胞に限る。)

(2) 外国で樹立されたヒトES細胞で、樹立指針と同等の基準に基づき樹立されたものと認められるもの(生殖細胞の作成を行う場合には、当該外国の法令等及びヒトES細胞の提供に関する条件においてヒトES細胞から生殖細胞を作成しないこととされていないものに限る。)

(禁止行為)

第5条 ヒトES細胞を取り扱う者は、次に掲げる行為をしてはならない。

(1) ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法によりヒトES細胞から個体を生成すること。

(2) ヒト胚へヒトES細胞を導入すること。

(3) ヒトの胎児へヒトES細胞を導入すること。

(4) ヒトES細胞から生殖細胞の作成を行う場合には、当該生殖細胞を用いてヒト胚を作成すること。

(ヒトES細胞の分配等)

第6条 使用部局は、分配機関へのヒトES細胞の寄託のほか、他の使用機関、使用部局、臨床利用機関又は海外機関に対してヒトES細胞を分配することができるものとする。

(臨床利用機関に対する分配の要件)

第7条 臨床利用機関に対するヒトES細胞の分配は、当該ヒトES細胞が分配機関から分配を受けたものでない場合であって、契約その他の方法により、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。

(1) ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法による個体の生成、ヒト胚及び人の胎児へのヒトES細胞の導入並びにヒトES細胞から生殖細胞の作成を行わないこと。

(2) 分配を受けたヒトES細胞を、他の機関に対して分配又は譲渡をしないこと。

(3) ヒトES細胞の使用に関する技術的能力及び倫理的な識見を向上させるために必要な教育及び研修(以下「教育研修」という。)を実施するための計画(以下「教育研修計画」という。)が定められていること。

(4) 個人情報の保護のための十分な措置が講じられていること。

(5) 作成した分化細胞を譲渡する場合には、当該分化細胞がヒトES細胞に由来するものであることを譲渡先に通知すること。

(6) 前各号に掲げる要件に反することとなった場合においては、直ちにヒトES細胞の使用を終了すること。

(7) ヒトES細胞の使用を終了したときは、残余のヒトES細胞を廃棄し、又は分配をした使用部局に返還又は譲渡すること。

(海外機関に対する分配)

第8条 使用部局による海外機関へのヒトES細胞の分配は、分配先との契約その他の方法により、次に掲げる要件を満たす場合に限り、行うことができるものとする。

(1) 分配をするヒトES細胞の使用が、当該海外機関が存する国又は地域の制度等に基づき承認されたものであること。

(2) ヒトES細胞の取扱いについて、当該海外機関が存する国又は地域の制度等を遵守すること。

(3) 分配を受けたヒトES細胞を、他の機関に対して分配しないこと。

(4) ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法による個体の生成、ヒト胚及びヒトの胎児へのヒトES細胞の導入並びにヒトES細胞から作成した生殖細胞を用いたヒト胚の作成を行わないこと。

(5) 基礎的研究及び医療目的以外の利用を行わないこと。

(6) 人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞を分配しようとする場合、個人情報の保護のため十分な措置が講じられていること。

(7) 前各号に掲げる要件に反することとなった場合においては、直ちにヒトES細胞の使用を終了すること。

(人クローン胚の作成に用いられた体細胞の提供者の個人情報の保護)

第9条 人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞の使用又は分配(当該ヒトES細胞から作成した分化細胞の譲渡を含む。)に携わる者は、体細胞の提供者に関する情報について、個人情報の保護に関する法令等を遵守するほか、当該情報の保護に最大限努めなければならない。

(総長の任務)

第10条 総長は、本学におけるヒトES細胞の使用について総括し、次に掲げる業務を行うものとする。

(1) 本学におけるヒトES細胞の使用に係る規程等の制定及び改廃その他の重要事項について、大阪大学研究倫理審査委員会に諮問し、意見を聴くとともに、必要な措置を講じること。

(2) 本学におけるヒトES細胞の使用に係る事項について、必要に応じて、使用部局の長(以下「部局長」という。)及び使用責任者に対してその留意事項、改善事項等に関して指示を与えること。

(3) 本学において、指針及びこの規程を周知徹底し、それらを遵守させること。

(部局長の任務)

第11条 部局長は、ヒトES細胞を取り扱う者によるヒトES細胞の使用における総責任者として統括を行う。

2 部局長は、当該部局における次に掲げる業務を行うものとする。

(1) 使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性を審査するため、当該部局に、ヒトES細胞倫理審査委員会(以下「倫理審査委員会」という。)を設置すること。ただし、当該部局で倫理審査委員会の設置又は審査が困難な場合は、学内の他の部局に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することができる。

(2) 当該部局におけるヒトES細胞の使用について、必要な事項を定めること。

(3) 使用責任者から使用計画の実施の了承を求められたときは、使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について倫理審査委員会(第1号ただし書に規定する場合にあっては、学内の他の部局に設置された倫理審査委員会。以下同じ。)から意見を聴くとともに、当該意見に基づき使用計画の指針及びこの規程に対する適合性を確認し、当該使用計画の実施について、あらかじめ文部科学大臣に届け出て、その実施を了承すること。

(4) 使用責任者から使用計画の変更(次号及び第6号に規定する変更を除く。)の了承を求められたときは、当該変更の妥当性について倫理審査委員会から意見を聴くとともに、当該意見に基づき使用計画の指針及びこの規程に対する適合性を確認し、当該変更を了承した後、速やかに、文部科学大臣に届け出ること。

(5) 使用責任者から使用計画の実質的な内容に係らない変更(次号に規定する変更を除く。)について報告があったときは、その旨を倫理審査委員会及び文部科学大臣に届け出ること。

(6) 使用部局の名称及び所在地に変更があったときは、速やかに文部科学大臣に届け出ること。

(7) ヒトES細胞の使用の状況を把握するとともに、必要に応じて、使用責任者に対しその留意事項、改善事項等に関して指示を与えること。

(8) ヒトES細胞の使用を監督すること。

(9) 当該部局において、指針及びこの規程を周知徹底し、それらを遵守させること。

(10) ヒトES細胞の使用に関する教育研修計画を作成し、教育研修を実施すること。

3 部局長は、前項第1号から第5号まで、第7号及び第10号の状況について、総長へ随時報告しなければならない。

4 部局長は、次条第5号の報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを倫理審査委員会、総長及び文部科学大臣に提出しなければならない。

5 部局長が使用責任者となる場合は、あらかじめ部局長が指名した者が、部局長の任務を代行するものとする。

(使用責任者の任務)

第12条 使用責任者は、次に掲げる業務を行うものとする。

(1) ヒトES細胞の使用に関し、内外の入手し得る資料及び情報に基づき使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について検討し、その結果に基づき、使用計画を記載した書類(以下「使用計画書」という。)を作成すること。

(2) ヒトES細胞の使用を総括し、研究者等に対し必要な指示を行うこと。

(3) ヒトES細胞の使用が使用計画書に従い適切に実施されていることを随時確認すること。

(4) 前条第2項第10号に規定する教育研修に研究者等を参加させること。

(5) 臨床利用機関又は海外機関に対してヒトES細胞を分配したときは、分配の状況を記載した報告書を作成し、部局長に提出すること。

(倫理審査委員会)

第13条 ヒトES細胞の使用に際しては、その科学的妥当性及び倫理的妥当性について、倫理審査委員会において審議するものとする。

2 倫理審査委員会は、次に掲げる業務を行うものとする。

(1) 指針及びこの規程に即して、使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性について総合的に審査を行い、その適否、留意事項、改善事項等に関して部局長に対し意見を提出すること。

(2) 使用の状況について報告を受け、必要に応じて調査を行い、その留意事項、改善事項等に関して部局長に対し意見を提出すること。

3 倫理審査委員会は、審査の記録を作成し、これを保管するものとする。

4 倫理審査委員会は、次に掲げる要件を満たすものとする。

(1) 使用計画の科学的妥当性及び倫理的妥当性を総合的に審査できるよう、次に掲げる要件に全て適合していなければならない。ただし、からまでに掲げる者については、それぞれ他を同時に兼ねることはできない。

 生物学・医学の専門家等、自然科学の有識者が含まれていること。

 倫理学・法律学の専門家等、人文・社会科学の有識者が含まれていること。

 一般の立場に立って意見を述べられる者が含まれていること。

 本学に所属する者以外の者が2名以上含まれていること。

 5名以上で構成され、男女両性で構成されていること。

 使用計画を実施する研究者等又は使用責任者との間に利害関係を有する者が審査に加わらないこと。

(2) 倫理審査委員会に関する規則が定められ、かつ、当該規則が公開されていること。

5 使用計画を実施するヒトES細胞を取り扱う者は、倫理審査委員会の審議及び意見の決定に同席してはならない。ただし、当該倫理審査委員会の求めがある場合には、その会議に出席し、使用計画に関する説明を行うことができる。

6 倫理審査委員会は、使用計画の軽微な変更等に係る審査について、当該倫理審査委員会が指名する委員による審査を行い、意見を述べることができる。当該審査の結果は、全ての委員に報告されなければならない。

7 倫理審査委員会の議事の内容は、当該倫理審査委員会に関する規則により非公開とすることが定められている事項を除き、公開するものとする。

(技術的遵守事項)

第14条 ヒトES細胞の使用に際しては、次に掲げる技術的事項を遵守しなければならない。

(1) 使用責任者は、ヒトES細胞が生殖細胞等に分化できる細胞である等の性質に関する認識並びにヒトES細胞の使用に関する十分な専門的知識及び技術的能力を有していること。

(2) 使用責任者は、動物のES細胞又はヒトiPS細胞を使用する研究に関する十分な実績及び経験があり、かつ、第12条各号に規定する業務を的確に実施すること。

(3) 研究者等は、ヒトES細胞を使用するに足りる十分な技術的能力を有していること。

(4) 実験室は、常時施錠し、関係者の同意なくそれ以外の者を入室させないこと。

(5) ヒトES細胞の使用に係るインキュベーター、クリーンベンチ、細胞保管容器及び培養に必要な実験機器は、実験室に設置すること。

(倫理的遵守事項)

第15条 ヒトES細胞を取り扱う者は、次に掲げる倫理的事項を遵守しなければならない。

(1) ヒトES細胞に関し十分な倫理的認識を有し、その倫理的認識を維持できるように努めること。

(2) ヒトES細胞の使用に関し、常に倫理的妥当性を検証すること。

(進行状況の報告)

第16条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用の進行状況を部局長及び倫理審査委員会に随時報告するものとする。

2 生殖細胞の作成を行う使用責任者は、前項の報告に加え、少なくとも毎年1回、生殖細胞の作成状況を記載した報告書を作成し、部局長に提出するものとする。

(使用の終了)

第17条 使用責任者は、ヒトES細胞の使用を終了したときは、速やかに、使用の結果を記載した報告書を作成し、部局長に提出するものとする。

2 部局長は、前項の報告書の提出を受けたときは、速やかに、その写しを倫理審査委員会、総長及び文部科学大臣に提出するものとする。

(分化細胞の取扱い)

第18条 使用部局は、作成した分化細胞を譲渡する場合には、当該分化細胞がヒトES細胞に由来するものであることを譲渡先に通知するものとする。

2 生殖細胞の作成を行う使用部局は、作成した生殖細胞を譲渡する場合には、前項の通知を行うほか、当該生殖細胞の取扱いについて、譲渡先との契約その他の方法により、次に掲げる事項が確保されることを確認しなければならない。

(1) 生殖細胞は、次のいずれかに資する基礎的研究に用いられること。

 ヒトの発生、分化及び再生機能の解明

 新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発

(2) 生殖細胞を用いてヒト胚を作成しないこと。

(3) 生殖細胞を他の機関に譲渡しないこと。

(4) 生殖細胞を譲渡した使用部局が、前各号に掲げる生殖細胞の取扱いの状況について、必要に応じて、譲渡先から報告を求めることができること。

3 使用部局が前項の規定により生殖細胞を譲渡しようとするときは、使用責任者は、あらかじめ、部局長の了承を求めるものとする。

4 部局長は、前項の了承をするに当たっては、作成した生殖細胞の譲渡が第2項の規定に適合していることを確認するものとする。

5 部局長は、第3項の了承をしたときは、速やかに、その旨を倫理審査委員会、総長及び文部科学大臣に報告するものとする。

6 生殖細胞の作成を行う使用部局が、使用の終了後に引き続き当該生殖細胞を取扱う場合は、第2項第1号から第3号までに掲げる事項を確保するものとする。

(研究成果の公開)

第19条 ヒトES細胞の使用により得られた研究成果は、知的財産権及び個人情報の保護等に支障が生じる場合を除き、公開するものとする。

(雑則)

第20条 この規程に定めるもののほか、ヒトES細胞の使用に関し必要な事項は、別に定める。

この規程は、平成22年12月15日から施行する。

この改正は、平成27年3月17日から施行する。

この改正は、令和元年7月1日から施行する。

この改正は、令和4年6月1日から施行する。

大阪大学におけるヒトES細胞の使用に関する規程

平成22年12月15日 第1編第4章 研究推進

(令和4年6月1日施行)