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~多文化共生の視点を防災・被災支援に~地域、企業、留学生を巻き込んだグローカルな取り組み

社学産学連携による防災減災活動

小川理事 日本で暮らす外国人や旅行者が増える中、大学として防災・被災時支援にどう取り組んでいくべきなのか、教えてください。

後藤特任准教授 昨年6月の大阪北部地震では、130名を超える本学留学生が箕面市内の小学校体育館に避難しました。その際、避難所運営者の多言語対応や、異なる宗教・食文化への理解が不十分だったうえ、正直なところ本学からのサポートも後手に回った感がありました。今後は山根聡教授(言語文化研究科)たちが開発中の「多言語対応の災害時想定問答マニュアル」なども活かしつつ、災害時に「誰ひとり取り残さない支援」に当たりたいと考えます。

小川 大学が大切な情報を発信しても、地域住民や留学生との間に相互理解がなければうまく伝わらない問題もありますね。

後藤 どんなに大切な情報も届かなければ意味がありません。とくに災害時の困難を乗り切るための支え、助けになるのがコミュニケーションであり、他者とのつながりです。日頃から助け合える関係性が構築できているかどうかが重要です。「防災の日」である昨年9月1日、社学共創セミナー「防災のある街へ」を豊中キャンパスで開催し、私は「大阪北部地震における阪大生と市民の避難行動」について講演しました。一方の産学共創においては「未来共創思考サロン活動支援プログラム」の一環として「防災・減災・発災時コミュニケーション共創サロン『フォワイエ阪大』」を主宰し、本学各部局の当該研究や教育プログラムなどを横断的につなげられるように、サロン活動と連携しています。

市民とともにグループワークも

小川 なぜ、このような取り組みを始めたのですか?

後藤 東日本大震災などでの支援活動を通じ、寄り添うこと、つながることの大切さを実感しました。多言語による災害情報の共有問題に興味があるのは、かつて海外で新聞記者や調査研究者をしていた頃に、自然災害や乱開発、紛争地域などの現場に行くことが多かったからです。この経験から、被災者へのケアにも大きな関心を寄せています。現在は本学内外で、学生や留学生、地域の人などに向けてグローカルなマインドを持てる人材の育成、つまり「グローカル教育」を進めています。

小川 幅広い取り組みが必要ですね。

後藤 2017年の九州北部集中豪雨災害や昨夏の西日本豪雨災害では、大雨の中で防災無線の音声が各戸まで行き届かない事案など、避難指示の不備・不徹底が原因で数多くの犠牲者が出ました。そこで、避難周知や災害の情報、避難者・避難所の要望といった「災害時のコミュニケーション」の重要性が再認識されています。私は箕面市の地区防災委員会に参加したり、豊中市の外国人防災フェアを企画するなどして、留学生、外国人居住者支援のためのグループワークを実践中です。国際交流に興味がある市民も加わって、ハラルフード(ムスリムの戒律上、食べることが許される食物)の炊き出しなどの実習も行いました。

医学部含め総合大学だからできること

小川 学内の連携はどうですか?

後藤 共創機構で進めている未来共創思考サロンでは、地震や災害研究の専門家と異文化理解の専門家だけでなく、医学部や附属病院の救急医療チームの医師らともつながりつつ、いろいろな研究分野の先生がそれぞれの取り組み事例などを紹介し、意見や知恵を出し合う座談会を既に何度も開いています。

小川 一つの学問分野では対応できない問題が山積みです。深刻な問題に対して、総合大学だからできることがあると思います。ぜひ頑張ってください。

後藤 災害対策や防災減災には、総合的な学問アプローチが必要です。今後はセミナーを開催するなどして、地域社会や産業界との更なる連携を築いていく予定です。引き続き、ご支援や応援をお願い致します。

 

 

●小川哲生(おがわ てつお)

1962年生まれ。工学博士(東京大学)。東京大学工学部物理工学科卒。東京大学助手、NTT基礎研究所研究員、大阪市立大学助教授、東北大学助教授を経て、2000年より大阪大学大学院理学研究科教授。2015年より理事・副学長を務め、財務・情報推進・共創推進担当。専門は、多数の原子や電子などが集まっている状態の性質を、量子力学と統計力学に基づいて理論的に解明する「物性理論」。

 

 

●後藤厳寛(ごとう たけひろ)

1969年生まれ。東京大学大学院中退。米国の新聞社勤務を経て、国際機関、農林水産省の研究所などで持続可能な開発に関する調査研究に従事。立教大学、佐賀大学在職時に東日本大震災、九州北部豪雨を経験し、災害弱者に寄り添う支援を続ける。阪大国際教育交流センター(CIEE)で防災減災コミュニケーション、多文化共生などグローカル教育を実践中。2015年より特任准教授(常勤)。

 

 

大阪大学シンポジウム「産官学民で共に創る未来の社会」

大阪大学共創機構を地域、企業などにより深く知ってもらおうと、「大阪大学共創フェスティバル」を昨年11月に2回、吹田市内で展開した。第一弾として大阪大学シンポジウム「産官学民で共に創る未来の社会」をホテル阪急エキスポパークで6日開催し、約450人が参加した。

西尾章治郎総長が「指定国立大学法人として、本学がその核としている社会との『共創』活動を、一層強力に進めていきたい」と開会あいさつ。小川哲生理事・副学長が、機構の趣旨について解説した。

続いて、川淵三郎日本サッカー協会キャプテンが「夢があるから強くなる」と題して基調講演。「阪大のモットー『地域に生き世界に伸びる』は、Jリーグの理念とも軌を一にする」などと、共感を示した。この後、西尾総長との対談や活動報告などを行った。

さらに大阪大学共創DAY@EXPOCITY「大阪大学とあそぼう」を17日、ららぽーとEXPOCITYで開催。研究室、学生団体などから38ブースを出展し、市民など延べ約1万9000人が来場した。

 4エリアのブースを巡る「シールラリー」で1200名を超える達成者に、ワニ博士の学位証や阪大グッズを贈呈した。

 

(本記事の内容は、2019年2月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)

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