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「トランスアトランティック・エコロジー  環境文学/思想の還流と変容」公開セミナー・特別講演会

2015年9月4日 (金) 13:00 から 17:00

大西洋をはさみ対峙する大ブリテン島およびヨーロッパ大陸の旧世界と、アメリカ合衆国を中心とする新世界の間には、近代初期より多くの文化交流、衝突、変容が見られる。この公開セミナー・特別講演会では、環境文学や環境思想におけるトランスアトランティックな展開を解明するため、20世紀の核をめぐる言説や文学における、そしてアメリカンルネサンス時代の文学と思想における英米の交流のダイナミズムを、エコクリティシズムの観点から読み解くことを試みる。

 

【研究発表】

伊藤詔子、「戦後70年とエコクリティシズム―American Prometheus, Robert Oppenheimer と英米文学」

戦後70年の時代区分に着目した最近のエコクリティシズム研究といえば、Timothy MortonのHyperobjects: Philosophy and Ecology after the End of the World (2013)や、核汚染を一般論としてではなく世界史の中で捉える論文を含む Serenella Iovino, Serpil Oppermann 編、Material Ecocriticism (2014)等が想起される。地球を構成する物質的変化への懸念は異常気象や地球温暖化や氷河の融解による極地の生態系激変や海抜の上昇など多岐にわたっていることは言うまでもないが、同時に地質学(geology)は地政学(geopolitics)と密接に関わる。それと並行して我々が取り組まなければならないのは、核に関わる環太平洋の諸都市、ハンフォード、ネヴァダ・テストサイト、実験場風下地域、広島、長崎等が生み出した〈核の場所の文学〉に関わる研究である。核の場所のうちトリニティとロスアラモスというGround Zero原点については、情報不開示もあり考察が限定的であった。本論はトリニティの言説全体の考察〈トリニティ・サーガ構築〉の一部として、「トリニティ」の命名者にしてAmerican PrometheusとよばれてきたRobert Oppenheimerについて、多くの言説を紹介し、環大西洋的視点から、Oppenheimerが愛読したT. S. EliotとJohn Donneの宗教詩、および1945年7月16日原爆炸裂時朗誦したとされるBhagavad Gitaの詩句との関係、さらにOppenheimerをめぐるアメリカ詩のうち、Allen Ginsbergの詩を中心に考察したい。

 

【特別講演】

竹内勝徳「長期的共鳴作用としての独立革命−−−ホーソーンとメルヴィルの環大西洋的想像力を中心に」

1840年代のアメリカ合衆国は、領土拡大に伴う交通網の整備や、北部州の工業化、それを推し進める労働力としてのヨーロッパ移民の流入に伴い、 国家のイメージが拡散する傾向にあったが、それ故、ミニチュア合衆国としての西部においてそのアイデンティティを確定する必要性に迫られてもい た。黒人奴隷制度をめぐる南北間の議論に加えて、この事情が浮上するにつれて、アメリカとは何かという概念規定が、文学者たちの中心的な課題の1 つとなった。結果として、同時代の多文化的傾向と、独立革命に遡ってアメリカのアイデンティティを確定させる試みが、時空を超越して交錯するに 至った。しかも、そこでは独立革命さえ、実は環大西洋的な多国籍性を包含していたという事実が掘り起こされる。アメリカ的ダイナミズムを形成する このプロセスにおいて、ナサニエル・ホーソーンやハーマン・メルヴィルは国家間の文化の交換や越境する移民の姿に向き合い、それらを想像し、環大 西洋に広がる物語世界を構築していった。アメリカン・ルネサンスを代表する二人の作家がいかなる想像力によって環大西洋の時空を共有し、そこから どのような物語を創出したのかを考えたい。可能であれば、同時代のイギリス作家がこうしたダイナミズムの中にいかなる共鳴作用を感じ取ったのかを 論じてみたい。

日時: 2015年9月4日 (金) 13:00 から 17:00
主催: 科学研究費基盤(B)「トランスアトランティック・エコロジー 環境文学/思想の還流と変容」
場所: 言語文化研究科A棟2階大会議室
参加登録: 不要
URL: http://sunrise-n.com/transatlantic_ecology/
連絡先: 小口一郎(言語文化研究科)
ikoguchi@lang.osaka-u.ac.jp

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