「出師の譜」
      作歌 大松 亮一(5文乙)
      作曲 池田昌一郎(5文甲)
      改曲 赤松 義夫(19理甲)
      同  荻野  泉(20理乙)



  1. 武人の墓や苔むして
    蜂蝶(ほうちょう)眠る夏の草
    濁世をなげく三尺(せき)
    秋水光今はなく
    浮華の巷に我立てば
    絞る鎧の袖ぞなし

  2. 栄華の夜は平氏かな
    源氏起りて一朝の
    夢と淡くも去りはてし
    青史は印鑑(かがみ)残したり
    いざや剣とり進まなん
    花の都で鞘走れ

  3. 血潮は凝つて紅の
    薔薇(しょうび)あざむく意気の花
    此の花蔭に集ひては
    武人の思ひいやまして
    虎徹の太刀のつぱなりに
    紅霓の意気熱の腕

  4. 花とこしへの春ならじ
    痴人夢見る花の世も
    やがて尽きゆく美酒(うまぎ)なれ
    地の現世(うつしよ)をとはにせき
    磨きこし魂(たま)意気の花
    万朶の花と咲かんかな