「水泳部々歌(一)」
      作歌 入代俊雄(2文甲)
      採譜 荻野 泉(20理乙)



  1. 夏白銀(しろがね)の雲崩れ
    紺碧波に花ひらく
    まひるの海にひたる時
    我等が胸は高鳴りて
    いのち愛(かな)しと思ふかな
    いのち愛しと思ふかな

  2. あゝ寂然(じゃくねん)の水の面に
    浮ぶ我れらに陽は照れり
    鴎はゞたく空の下
    (いさな)と泳ぎ戯れて
    魚と泳ぎ戯れて
    若きいのちを称(たた)へなん
    若きいのちを称へなん

  3. 海黒々(くろぐろ)と暮れゆけば
    漕ぎ出(づ)る船の艫にともに
    夜光(やから)の虫の光るかな
    ふなべり垂れし我が手にも
    ひそけく光る哀れさや
    なんぢ落ちたる海の星

  4. 月ぬれぬれて波に浮き
    沖の潮騒(しほざい)はらばらに
    海の魅惑を語るとき
    君よ静かに我に倚(よ)
    銅色(あかがね)の我がはだに
    藻の花ほのかに匂はずや

  5. をか()ゆく我にひそぴそと
    海の囁き聞ゆなり
    まひる砂地に腹這(はらば)ひて
    沖辺の白帆見送りし
    磯馴(そなれ)の松のかたほとり
    君よ歌はん海の唄