「雙悲恋の譜」
      作歌 徳永 元 (2文乙)
      作曲 徳永 元 (2文乙)
      採譜 荻野 泉 (20理乙)



  1. かをるや野辺の南瓜(なんが)
    羽がひ打ちかひ舞い狂ふ
    雄蝶雌蝶を見守(まも)る時
    思ひはせまる若人の

  2. 淀の流れの夕堤
    落陽(いりひ)をあびて逍遙(さすら)ひし
    去年(こぞ)初夏偲ぶれば
    逝きて帰らぬ君恋し

  3. 処は移り時去れど
    陵下に夏の蘇り
    永遠の旅路のその君に
    おもかげかよふ乙女あり

  4. 小町ヶ塚のおぼろ月
    (た)が故に泣くその涙
    君なきの我の空し心
    (や)らむ乙女子あるものを

  5. 朱染み渡る朝にも
    星またゝける夕(ゆうべ)にも
    慕ひに恋ふる乙女子が
    恋知らぬよのいぢらしや

  6. 思はつのる夏の夜に
    彼女が住家をもれ聞ゆ
    歌声今はとだえして
    月たゞ虫の音にむせぶ