「西南寮々歌」
      作歌 清徳保男 (4理乙)
      採譜 赤松義夫 (19理甲)



  1. 青雲かすかにたゞよふ空を
    まひるの光に風ゆるがせて
    若草みどりに砂丘は赤く
    白日大地に光はみちて
    大仙陵下に夏うつろへば
    ものいはぬものにあきつはかるし
    あゝ遷り行く時をしむべく
    沈黙の血しほ流るゝ若き日よ

  2. 南風薫(くん)ずと太陽は笑む
    真夏の親しきおとなひうけて
    もの皆うるほひ光にゆるぎ
    木々なすしげみに緑くるへり
    かゞやきみなぎり声高くよぴ
    地に生れ出づるかげろふは舞ふ
    今この夏の気胸にしうけて
    天かける我が魂にみつるかな

  3. 蒼海ひようびょう曙そめて
    金剛葛城紫淡し
    すがすがしきかな香のかんばしく
    ローレルかざせる若き額に
    第一の光ほゝゑみてりぬ
    清爽白路(せいそうはくろ)を先駆者ははせ
    つぐべき時代の偉大をつたふ
    地にありて永世(とこよ)をきはむ時なりと

  4. うるはし薫の匂ふばかりに
    春風のどけく川辺をふけば
    楊柳音なく葉はひるがへり
    いろくづうごかぬ水きよらかに
    夢あり友どち集ひいだきて
    (さち)あるこの日を歌ひつくさず
    雲いで雲さり止めがたくして
    若き日の憂に似たる思かな

  5. 雨音さつきのゆかリの花と
    かすかに地をうつ音なつかしみ
    玉手の山なみ麓の森を
    幽明ましろくけむり立ちたり
    楠の葉ゆたかに水うるませて
    夕庚(ゆつゝ)の光梢をゆらぐ
    はてなき空ゆく煙さぴしく
    たまきはる命の果を思はずや

  6. 冬の夜ゆらめき六寮(りくりょう)わたる
    我等が歌声ひとみうるほひ
    相よる友どち感激の火に
    今宵のうたげ尽きざる幸や
    かの空かの海かの大地をば
    永久なる理想のいつくしみもて
    はぐくむわれらが感慨ふかく
    唯一のこの若き日をうたはずや