「西北寮々歌」
作歌 国行道男 (2理乙)
作曲 四宮 保 (2理乙)
採譜 荻野 泉 (20理乙)
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丘陵はるけき帝塚(てづか)の辺り
若草緑に光りぞ深く
春日煦々(くゝ)たり牧場(まきば)に溢れ
弥生(やよい)の丘に群羊(ぐんよう)なだる
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雪舞う空に入陽(いりひ)の映えて
輝く光の焔(ほむら)彼方へ
暮れ行く丘に静寂こめて
晩鐘遠く牧人(ぼくじん)をうつ
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銀鈴音なす小川のほとり
妙なる小笛に羊群をよび
大地に額(ぬか)き逝く日を想ひ
安けき今宵の祈捧げん
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今聖天(しょうてん)の森影消えて
淋しき孤灯の牧人を待つ
たゞよふ真闇に若草を踏み
牧場の極(はて)にたどり帰らん
三歳の春の牧場を訪ひて
いとしき子羊こよなく肥ゆれど
憧憬(あこがれ)もとめて彷徨(さま)ふ魂(たま)の
行方もわかず哀れぞ深き
夜半(よは)吹く嵐折戸をたゝき
恋いをる夢のかなしく破る
すきもる風に灯(ともしび)ゆらぎ
うちふす褥(しとね)いとど冷か
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橄欖(かんらん)蔭はしばしの憩ひ
花より先にちり行く春は
玉の乙女の命ををしむ
歎ずる哀歌に秋風深し
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牧人母なく故郷(ふるさと)遠し
なく雁(かりがね)に揺籃を恋ふ
嘆け帰らず逝く若き日は
生まれし悩みとくべくもなし
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