「西北寮々歌」
      作歌 国行道男 (2理乙)
      作曲 四宮 保 (2理乙)
      採譜 荻野 泉 (20理乙)



  1. 丘陵はるけき帝塚(てづか)の辺り
    若草緑に光りぞ深く
    春日煦々(くゝ)たり牧場(まきば)に溢れ
    弥生(やよい)の丘に群羊(ぐんよう)なだる

  2. 雪舞う空に入陽(いりひ)の映えて
    輝く光の焔(ほむら)彼方へ
    暮れ行く丘に静寂こめて
    晩鐘遠く牧人(ぼくじん)をうつ

  3. 銀鈴音なす小川のほとり
    妙なる小笛に羊群をよび
    大地に額(ぬか)き逝く日を想ひ
    安けき今宵の祈捧げん

  4. 今聖天(しょうてん)の森影消えて
    淋しき孤灯の牧人を待つ
    たゞよふ真闇に若草を踏み
    牧場の極(はて)にたどり帰らん

  5. 三歳の春の牧場を訪ひて
    いとしき子羊こよなく肥ゆれど
    憧憬(あこがれ)もとめて彷徨(さま)ふ魂(たま)
    行方もわかず哀れぞ深き

  6. 夜半(よは)吹く嵐折戸をたゝき
    恋いをる夢のかなしく破る
    すきもる風に灯(ともしび)ゆらぎ
    うちふす褥(しとね)いとど冷か

  7. 橄欖(かんらん)蔭はしばしの憩ひ
    花より先にちり行く春は
    玉の乙女の命ををしむ
    歎ずる哀歌に秋風深し

  8. 牧人母なく故郷(ふるさと)遠し
    なく雁(かりがね)に揺籃を恋ふ
    嘆け帰らず逝く若き日は
    生まれし悩みとくべくもなし