「巡蹟会の歌」
   1~4 作歌 硲  晃 (20文乙)
   5~7 作歌 荻野 泉 (20理乙)
       作曲 武田周一 (21文乙)



  1. あゝ山かをる斑鳩(いかるが)
    皇子(みこ)のみあとを慕ふ児等
    高くも深き国ぶりの
    むかしの華ぞいま匂ふ
  2. 山紫に水清き
    室生の里ぞいと静か
    愛のみ霊(たま)の宿るらむ
    うるはしの塔なつかしき
  3. 維新の悲歌ぞなほかなし
    十津の谷間の夕まぐれ
    父祖の灯火(ともしび)水に映え
    銀漢高く吾を待つ
  4. 香久のふもとに秋は来ぬ
    廃墟につたへの虫の声
    飛鳥藤原時うつり
    大和国はら事しげし
  5. 若草山の春の色
    かすみの中に咲き出でし
    寧楽(なら)の都の宮人の
    花の匂ひも残るかな
  6. あかとき告ぐる隠(こも)り口(く)
    泊瀬(はつせ)のみ寺の鐘の声
    ほとけの前にぬかづけば
    古りにし歌ぞしのばるる
  7. (ぬ)れぬる髪やひめ皇女(みこ)
    身を果てきとふ物語
    二上(ふたかみ)山のいただきは
    熱き涙をとどむらん
  8. 吉野の里に冬来れば
    山路は雪にとざされて
    人目離(か)れゆく南朝の
    み墓の庭に音もなし
  9. ああ美はしき山河や
    たどりて行かん古の
    歴史の跡のいざなひに
    夢はるかなり旅の道