「第八十回記念祭歌」
      作歌 日高基男 (25理乙2)
      作曲 赤松義夫 (19理甲)


  1. (まぶた)の影に浮び出づ
    我が故郷(ふるさと)の三層楼
    帝塚(てづか)の野邊をさすらひし
    白線二條の朴歯(ほうば)の音(ね)
    自治の燈火(ともしび)瞬きて
    惜春の夢醒めやらじ

  2. 學理(まなび)の道はいや深奥(ふか)
    圖南(となん)の窓に読書(ふみよ)めば
    憧憬(あくがれ)高く踏み入りて
    弊衣(へいい)にかかる櫻(はな)吹雪
    夕陽赫(あか)く寮庭(にわ)に映え
    (た)が口誦(ずさ)む「逍遙歌」

  3. クローバ萌ゆる丘に伏し
    蒼穹(そうきゅう)に白雲(くも)仰ぎ見つ
    (あつ)き賢友(とも)との語(かた)らひに
    四つ葉に幸を栞りては
    人の愛情(なさけ)を吾知りぬ
    ああ純真の想春譜

  4. 端艇(たんてい)淀に棹させば
    (かいな)に涼し飛び沫(しぶ)
    緑風清く川面(おも)にゆれ
    長堤(ちょうてい)遠く流れ行き
    巷の雑塵(ちり)は消え去りて
    水の都は暮れなずむ

  5. 篝火(かがりび)高く天を染め
    若き生命(いのち)の美酒に酔ひ
    抱肩(かたく)む熱き頬燃えて
    我が揺籃の學舎(まなびや)
    榮光の子を見守りぬ
    感涙盡きぬ記念祭

  6. 明治・大正はや旧(ふ)りて
    昭和の御代も過ぎ行きぬ
    警世の聲(こえ)地に堕ちて
    遊民多き平成の
    憂國の士に今告げん
    帝寮健児の情熱(ねつ)の寮歌(うた)

  7. 夢覺(さ)めくれば霜月や
    創業遙か八十年
    紅顔齢(よはひ)に移ろふも
    心は青春(はる)の男児(おのこ)らが
    逝きにし畏友(とも)と共に舞ふ
    高き理想の「全寮歌」
      「嗚呼黎明は近づけり」
         「嗚呼暁鐘は鳴り響く」