「第二十七回記念祭歌」
      作歌 佐藤一男 (26文丙)
      作曲 坂本健二 (25理乙1)


  1. 斜陽(ななめび)丘壑(おか)に薄れ行き
    角笛(つのぶえ)渓谷(たに)に谺する
    黄昏迫る搖籃(ようらん)
    二十七年歳(にじゅうななとせ)廻歴(めぐり)来し
    今宵も焚かん祝賀(ことほぎ)
    紅蓮(あかあか)舎庭(にわ)に祭り火を

  2. ローレル匂ふわが苑に
    移らぬ北辰(ほし)を仰ぎつゝ
    いざ君乾せよ杯盃(さかづき)
    琥珀の淡き美酒(うまざけ)
    謳歌(うた)はんさらば花蔭に
    我等が鮮血(あか)き情熱(ねつ)の歌

  3. 饗宴(うたげ)の宵も更け行けば
    早や三更の月の影
    敗れし丘垤(をか)は城朽ちて
    霜月虚空(そら)に懸け渡り
    哀愁(かなしみ)帯びし竪琴(たてごと)
    消え行く形象(もの)の奏弾(おと)と聴く

  4. 滔々世紀(とき)は流転(ながれ)ゐて
    頽廃の声地に満てど
    憂ふるなかれ邪曲(よこしま)
    悪魔(サタン)に対向ひ快馬(かいば)駆る
    青雲高志の我が友の
    陵頭に立つ雄姿見よく

  5. 黎明(あけぼの)来たる革新(あら)た世の
    映輝(かがや)く幕は開かれぬ
    往昔(ふる)き衣ぞ脱ぎ棄てゝ
    守護(まも)りて往かん永久(とわ)の栄光(はえ)
    真理(ただし)き道は碧空(あおぞら)
    弧雁の如く清明(さやか)なり

  6. 祭火今や消え果てゝ
    東天薔薇(そうび)に霞む時
    友どちいざや丘墟(をか)に立ち
    青史に著るき帝陵の
    去り行く悲哀(かな)し挽歌(ひきうた)
    瞳孔(ひとみ)も陰(かげ)し聴かん哉

          (昭和24年)