「第十回記念祭歌」
      作歌 山蔭卓典 (10文乙)
      作曲 池田郁蔵 (9理甲)
      採譜 荻野 泉 (20理乙)


  1. 妖雲(よううん)剣もて排(はい)すべし
    自由は死もて護(まも)るべし
    たぎる血潮(ちしお)身に秘めて
    文武の道にいそしみつ
    図南(となん)の城に籠もる児の
    意気八荒(いきはっこう)にあふる哉

  2. やどるよすがは紫の
    この橄欖(かんらん)の花の下(もと)
    翼やすむる雛鳳(すうほう)
    門出(かどで)の朝(あした)しのぶとき
    彼蒼(ひそう)を閉ざす雲裂けて
    我が行く方(かた)に光あり

  3. 月明らかに星稀(まれ)
    外樹の梢ゆらめけば
    金剛葛城(こんごうかつらぎ)影淡く
    大野(おおの)の東(ひんがし)さえぎりて
    わが学舎(まなびや)は山の如(ごと)
    阿倍野原(あべのがはら)に黙(もだ)し立つ

  4. 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)咲く帝塚台(てづかだい)
    疾風(はやて)になびく旗芒(はたすすき)
    蜻蛉(あきつ)の群の乱れ飛び
    蕭条(しょうじょう)秋の更けゆけば
    健児六百祝(ほ)ぎ狂う
    創業の日はめぐり来ぬ

  5. あゝ若き日の三星霜
    結びも堅き友垣よ
    かたみに手に手とりかはし
    金盞(さんきんさん)捧げ高らかに
    歌いたゝへん今日の日ぞ
    十年(ととせ)の秋の記念祭

          (昭和六年)