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さぶいぼ たってる?大阪大学の最先端研究 さぶいぼ たってる?大阪大学の最先端研究

「その先の最先端へ。」ってなに!?

知を拓く人。新しい探求と挑戦。
大阪大学には、医学・工学をはじめ、数多くの学術分野で世界的に活躍する研究者の方々がいらっしゃいます。
ここでは、すばらしい研究成果を発表し、さらに新しいアプローチにも積極的に取り組み続けている
研究者の一部をご紹介!ぜひ、その最先端の研究に読んで触れてみてください。ちなみに、ワタシもドクターの端くれですっ!

vol.02

「知的財産」に強い人材を育てる拠点を目指す。 天然資源が少ない日本において、国際競争力を上げるひとつの手段として注目を集める「知的財産」。
大阪大学では、知的財産法を“誰もが知っておくべき法律”として知的財産センターを開設し、知的財産法に関するわが国初となる全学共通教育を行っています。
青江教授はそのセンター長として、今後ますます重要性を高める知的財産法の研究、専門家の育成を進めています。

青江 秀史(あおえ ひでふみ)

知的財産 センター長

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世界中のあらゆる分野が研究対象となる「知的財産」。

私は知的財産法の研究をしています。知的財産法は、世界中の人びとの創造活動と信頼を保護することで、世界の産業や文化の健全な発展を目的とする法律です。人びとの創造活動は農林水産業や製造業、サービス産業などのさまざまな産業界をはじめ、医療や介護、芸術などすべての分野で行われています。つまり、研究の対象は世界中のすべての分野と言っても過言ではありません。それゆえその研究や検討は、世界各国の大学だけではなく、国際連合、WTO(世界貿易機関)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)といった国際的な機関で行われています。

とりわけ天然資源の少ない日本では、わが国産業の国際競争力の強化を図る必要性が増大しています。そこで知的財産の創造、保護および活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、内閣に「知的財産戦略本部」が設置されています。その管轄の下、経済産業省、文部科学省、特許庁といった中央官庁をはじめ、経済団体連合会など多くの機関で計画立案や研究が国策として推進されています。このように、研究対象が非常に大きな分野になるため、当然のことながら、この分野で活躍する人もいわゆる理系・文系を問わない幅広い分野の人びとになります。

知的財産法は、発明を保護する特許法、デザインを保護する意匠法、ブランドを保護する商標法、地域の名前を付けた特産物の保護や不正な競争を防止する不正競争防止法といった産業に深い関わりのある法律と、文学や音楽、絵画といった文化の発展に寄与することを目的とした著作権法などの総称です。その一つひとつの法律の淵源や望まれる姿を考えることが研究となりますが、じつは研究されている内容はいわゆる法律の世界に止まりません。なぜならば、新しいアイデアから新しい技術が生まれますが、新しい技術からどのような新たなビジネスが生まれるかを考えることも研究のひとつと言えるからです。

例えば、インターネットという情報通信技術が一般に使われ始めてから20年くらい経ちますが、その技術を利用してインターネット銀行やインターネット通信販売などの新しいビジネスが多く創出されているのは、皆さんご承知のとおりです。そのビジネスの安全性や信頼性をどのように考えるかということ。あるいは、特定の独占的な利益だけを考えるのではなく、公平で世界の人びとの発展につながるビジネスの方法を考えるということも研究対象となるのです。さらには、最近では地方創生のために地域の名称を活用してブランド力のある特産物を作ろうとする動きもありますが、どのようにすればブランド力が高まるかを考えるのもテーマのひとつと言えるでしょう。また、会社や大学のなかで仕事として考えたアイデアや仕事のやり方などは、どのように取り扱うと会社や大学といった組織の発展と創造した人との調和がとれるのかなども大切な研究テーマとなります。

知的財産センターがになう役割

身近な問題の研究から、知財立国を支える人材育成まで。

次に、知的財産についてビジネスから生活・文化へ目を向けて考えてみましょう。身近な例では、音楽データのインターネット配信とダウンロード、書籍をデジタルデータにしてモバイル端末などに保存し持ち運びやすくして利用することなどを、どのように考えれば良いのかといった問題に気づくと思います。この問題は、音楽や絵を不正なコピーや模倣からどのように保護するのか、そしてどのような利用なら創作した人の権利を冒さずに許されるのかを考えるテーマとなるのです。このようなテーマは、人びとの創作活動を文化の発展へとつなげるとても大切な著作権法の研究です。また著作権法の分野では、論文の盗用防止といった方策も大切な研究テーマとなります。

本学では皆さんに、このような身近な問題から産業を支えグローバルな視点で未来を考える、やりがいのある知的財産の分野を学び、より良い姿にする挑戦をしてほしいと考え、「知的財産センター」を設置しました。知的財産のモラルから司法試験の知的財産分野および弁理士試験まで対応する、専門的講義の実施や知財専門家を目指すためのさまざまな研究ができる環境を整えています。さらに、学内の知的財産マネージメントを通じて、知的財産問題に強い弁護士を養成するインターン制度を持つ「智適塾」も開設しています。

知的財産センターの取り組み

PROFILE

青江 秀史

知的財産 センター長

1979年、成蹊大学法学部卒業。
同年、富士通株式会社に入社し、商務部商務課に配属。法務・知的財産権本部課長、ブリュッセル駐在員事務所長、広報室長、経営戦略室主席部長、CS経営推進室長を歴任。
2004年4月、大阪大学大学院高等司法研究科教授に就任し、
2006年4月より法政実務連携センター長、大阪大学総合計画室員、2010年4月からは、知的財産センター長も兼任。
編著に『インターネットと知的財産法』などがある。