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2020.8.6 Thu
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大阪公立大学の英語名称にかかる問題点について(第3報)

大阪公立大学がその英語名称を「University of Osaka」とする旨を公表されたことを受け、大阪府知事、大阪市長、公立大学法人大阪理事長に対し再考を申入れておりますが、残念ながら、現在までに再考する旨のご回答はいただいておりません。

「University of Osaka」は、既に海外では大阪大学として認識されており、特に海外の研究者、留学生にとって大きな混乱を招き、両大学の未来に甚大な障害となることは必至であると考えていますが、その後の報道等によりますと、「全国の大学でも同様の例がすでに複数あり、混乱もしていないので問題はない」といったコメントがなされました。

大阪大学は、適塾を源流とし、まず「大阪府医学校」として開設され、地元大阪の政財界や府民の皆様の熱心な支援活動によって「大阪帝国大学」が創設され、「地域に生き世界に伸びる」をモットーに今日まで発展してきました。

現在は、大阪府、大阪市、経済界の皆様と連携し、新型コロナウイルス感染拡大の防止に向けたワクチンや治療薬の開発、さらに、令和7年開催予定の大阪・関西万博の成功に向けて、大阪大学の持てる「知」をもって最大限に取り組んでまいりたいと考えております。

このように、産官学の強い連携が求められている非常に大切なこの時期に、両大学がともに、関西、そして日本全体を盛り上げていくことが必要だと考えておりますので、今回の英語名称の問題で無用の混乱を招くことがないよう願っており、ここに改めてご説明するものです。

(1)国内の他の事例では、学部・大学院の名称の重複がない 【参考資料の1】

公立大学は全国に93大学設置されていますが、そのうち今回と同様の事例は4件にとどまり、むしろ稀なケースといえます。

さらに、その4件においては、それぞれの大学が設置する学部及び研究科に重複する例はありません。その一方で、大阪大学と大阪公立大学が構想中の学域・学部及び研究科の名称においては、日本語、英語ともに重複する名称が9件もあります。

例えば、前回述べたように、国際学会の会場案内に、大阪大学工学部・工学研究科は“University of Osaka School/Graduate School of Engineering”と表記されており、大阪大学と大阪公立大学は区別できません。また、(4)で述べるように、「University of Osaka」と「Osaka University」は海外では同一視され、いずれも大阪大学を示すものとして定着しておりますので、混乱は避けられないと考えます。

これは上述の国内大学の事例とは明確に異なっている点であり、両大学に関係する海外の研究者や留学生等に大きな混乱を招くことは必至です。

(2)留学生による大学名の混同 【参考資料の2】

大阪大学の留学生数は、約2,600名であり、112か国から留学生を受け入れています。また、大阪公立大学においても、新大学基本構想において、国際力の強化に向けて多様な留学生の獲得を掲げられています。

そのため、留学を希望する海外の学生に、大阪大学と大阪公立大学の情報が混同し、誤解する可能性を生じさせることは、留学生の受入拡大を目指す両大学にとって、また、何より両大学に留学を希望する海外学生の将来の選択に影響するため、避けなければいけないと強く考えております。多くの留学生を受け入れるほど、その影響も大きくなります。

(3)論文における所属機関の混同 【参考資料の3】

大阪大学の学術論文数は、約64,000本(※)であり、海外の研究者や関係者の目に触れる機会も相当数あり、大学の英語名称を使用する機会は多いと言えます。((※)世界最大級の査読済み論文のデータベースであるスコーパス(Scopus)に収録されているものの合計)

そのため、教員の研究実績の成果である論文が異なる大学のものとして認識されることは、教員の業績が正当に評価されないことになります。論文の被引用回数はその研究の評価を決める大きな要因となることから、論文数が多くなるほど、その影響は大きくなります。世界ランキング向上を目指す大阪公立大学にとっても、世界大学ランキング等において実績が正しくカウントされないことは、大学の評価に影響を与えます。

(4)「University of Osaka」と「Osaka University」は海外では同一視
【参考資料の4】

英語圏である欧米諸国の例では、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)とオックスフォード大学(University of Oxford)は、大学のHPや公認の大学紹介ページにおいて、それぞれ「Oxford University」、「Cambridge University」という名称を公的にも使用しています。

また、25言語の専門教育を行う外国語学部をもつ大阪大学では、英語以外の言語を使用する諸国とも日常的に交流があります。海外の大学等との学術交流協定の締結も約750件に上ります。

フランス、スペイン、イタリアなどにおける言語やスウェーデン語では「Osaka University」は「University of Osaka」と同一表記でしか表せず、ラテン語においては、両者は同じ意味となります。

その他の非欧米諸国の言語においても、同様に同一大学と理解される可能性は高く、欧米諸国だけでなく、広く世界において混乱を生じさせることになります。

以上のことから、教育研究活動を行う海外の研究者や、両大学で学ぶ留学生数の規模等を考えると、大学名称の混同は国際的にも影響が著しく、英語名称は研究者や留学生に誤解や混乱を生じさせないようグローバルな視点から決定される必要があると考えます。

大阪大学としましては、今回の英語名称が国内外に無用の混乱を招くことのないよう、改めて関係者の皆様に再考を強くお願いしていく所存です。

令和2年8月6日
大阪大学

【参考資料】大阪公立大学の英語名称をUniversity of Osakaとした場合の問題点


2020年6月29日(月)

「University of Osaka」が大阪大学の英語名称として使用されている実態


2020年6月26日(金)

公立大学法人大阪が設置する新大学の英語名称について

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