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総長特別対談 村木 厚子/西尾 章治郎

ワークライフバランスの実現へ

西尾 本年4月1日から女性活躍推進法が施行され、本学でも「大阪大学男女協働推進宣言」の公表とともに、「男女協働推進センター」を設立しました。同センターの招へい教授にご就任いただきました村木さんから、本日は、大阪大学の男女協働をはじめとするダイバーシティ環境の構築をさらに前進させていくためのヒントやアイデアをお伺いしたく、どうぞよろしくお願いいたします。

村木 G20(20か国財務大臣・中央銀行総裁会議)などの国際会議に出席していますと、「inclusive growth」がキーワードになっていて、女性はもちろん、障がい者も含めた多様な人たちのパワーを引き出すダイバーシティ環境の実現が、世界の重要課題であると感じています。その意味で、大阪大学に、教育、研究、就業のあらゆる場面で男女協働を実現しようとするセンターが設立されたことで西尾総長の意気込みを感じます。

西尾 私は、「大阪大学男女協働推進宣言」で、三つの柱からなる「男女協働推進アクションプラン」を全学的に推進することを宣言しました。目指しているのは、①教育・研究・就業と家庭生活を両立できるワークライフバランスの実現、②どのようなライフステージにあっても構成員一人ひとりがキャリアアップできるシステムの構築、③性別、国籍、障がいや性的指向などに関わらず活躍できる環境を実現するための構成員の意識改革です。

村木 おっしゃる通りですね。これまでは、育児などの“ライフ”のために「休める」制度の充実を図ってきましたが、今後は、“ワーク”の側面、つまり育児をしながら継続してキャリアを積んでいける働き方改革が重要になります。

西尾 大阪大学には、「研究支援員制度」があります。これは、大学院生をはじめとする研究支援員が、育児や介護を抱えている研究者の研究活動を支援する制度で、途切れることなく研究を継続できる制度になっています。研究支援員に男子学生が参画していることも特筆すべきことだと思っています。また、私は、総長就任後、大学の意思決定に関わる役職者の女性比率を20%以上とし、理事、監事、管理職にも女性の登用を積極的に進めています。

村木 それは見事な数値ですね。女性の登用に関しては、お試しで怖々というケースが多いのですが、思い切って数値(女性比率)をあげてしまったほうが成功する確率が高いと思います。

西尾 2019年度末までに、新たに雇用する教員は全体数の30%を女性にしたいと考えています。比率の低い理工系の女性教員についても、25%という数値を掲げています。企業とのクロスアポイントメント(研究者が大学等の公的研究機関と企業の両方に身分を持つ)制度を先導的に推進するなど工夫を重ねて、この目標をぜひとも達成しようと考えています。キャンパス内に女性教員・研究者が相当な割合でいることで、学内の多様性が適度なバランスで保たれるとともに、新しい刺激と意欲が生まれ、大学の活性化に繋がると考えています。

村木 確かに、女性の比率が20〜30%を超えると、まるで半分以上女性がいるように見えてきて組織の雰囲気が変わり、組織全体に活力が生まれると思います。

西尾 男女協働が真に実現するためには、意識改革や広報活動も重要と考えています。

村木 男女雇用機会均等法が制定(1985年)された当時、法律の理念を広報するため労働省(現厚生労働省)の省内で標語を募集しました。採用されたのが、入省したばかりの女性職員が提案した「いま 個性は性を超える」です。これには皆、ものすごく賛同しました。それから30年以上たちましたが、これを超える標語は生まれていないように思います。

西尾 なるほど、いいフレーズですね。ぜひこの対談のタイトルにこれを掲げたいと思います。女性のことばかり取り上げてきましたが、私は、男性の育児休暇取得の推進も大きな課題だと思っています。大阪大学でも取得する男性教職員はほとんどいません。抵抗感というか取得しづらい空気があるように思います。男性の育児休暇は自然という職場環境を醸成していくことも大事ですね。

村木 実はいま、厚生労働省である試みを実施しています。毎月、子どもが生まれた男性職員とその上司を大臣室に呼んで、育児休暇の取得を大臣自らが促しているのです。これが功を奏するかどうか私は注目しています。

障がいや介護を越えて活躍できる環境作りへ

西尾 ダイバーシティ環境の実現では、障がい者との協働も大きな課題です。大阪大学には、2008年から通称「エコ・レンジャー」と呼ばれる障がい者雇用対策チーム(知的障がい者・身体障がい者の雇用に取り組む組織)所属の職員がキャンパス内をクリーンにする仕事に就いています。特に、炎天下や真冬に戸外で活動を行う姿には頭が下がる思いです。私としてはもっと多様な活動、例えばアートや創作の面などで、個性や隠れた能力を引き出せるような新たな方向性はないものかと模索しているところです。

村木 リーマンショック以降、雇用環境が悪化し、多くの障がい者が解雇されるという事態に陥りました。そのような状況のなか、大阪では、知的障がい者に対してインターンシップをはじめました。これを国の制度に取り入れて、3か月のトライアル雇用の制度を作りました。3か月たてば解雇されてしまうのではないかという大方の予想を裏切って、約8〜9割近い人がそのまま正規雇用されました。共に働くことで障がい者に対する認識が大きく変化したのです。大阪には、知的障がい者によるコンビニの運営や、現代アートに才能を発揮する知的障がい者の育成など質の高い素晴らしい取り組みがたくさんありますね。

西尾 近年、介護の問題も非常に深刻になってきています。これについてはどういう工夫が考えられますでしょうか?

村木 介護は長期戦ですから、これに耐えられるように、残業がなく短い時間で働ける制度や、仕事を「ちょくちょく休める」柔軟な休暇制度が必要だと思います。男性が介護に携わる場合には、相談相手がいないことが多いので、一人ひとりの状況を丁寧に見守る体制づくりも重要です。介護離職をなくすための環境づくりは地域を巻き込んで行うことも必要ですので、今後、産官学連携の研究テーマにもなるのではないかと思います。

西尾 大阪大学がダイバーシティ環境を充実させ、性別、国籍、障がいや性的指向等の有無にかかわらず、多様な構成員が個性を尊重され活躍するための包括的な支援を実行するため、今日の村木さんのお話をぜひ活かしていきたいと思います。

村木 ダイバーシティ環境が実現できる第一の条件は、トップのリーダーシップであると思っています。本日の対談を通して、大阪大学の今後が大いに期待できると確信しました。招へい教授としてお役にたてればとてもうれしく思います。

西尾 本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。構成員一人ひとりの個性が輝く環境づくりに率先して取り組んでいきますので、今後とも大阪大学へのご支援をよろしくお願いいたします。

 

村木厚子(むらき あつこ)氏
大阪大学男女協働推進センター招へい教授。高知大学文理学部経済学科卒業後、1978年に労働省(のちの厚生労働省)に入省。大臣官房政策評価審議官、大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭担当)、雇用均等・児童家庭局長、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)、厚生労働省社会・援護局長等を歴任、女性では16年ぶり2人目の厚生労働事務次官を務めた。2016年6月より伊藤忠商事株式会社社外取締役に就任。

西尾章治郎(にしお しょうじろう)
1975年京都大学工学部卒業、80年同大学院工学研究科博士後期課程修了(工学博士)。京都大学工学部助手、カナダ・ウォータールー大学客員研究助教授、大阪大学基礎工学部助教授、情報処理教育センター助教授を経て、92年同工学部教授。大阪大学サイバーメディアセンター長(初代)、同大学院情報科学研究科教授、同研究科長、大阪大学総長補佐、2007年〜11年同理事・副学長。13年同サイバーメディアセンター長。15年8月から現職。専門はデータ工学。

 

 

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