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山口 一さん(たる出版株式会社代表取締役社長 米国公認会計士)

一人静かに酒を飲む

大阪・北新地のなじみの店「〆うどん讃楽」のカウンターで一人じっくり酒を味わう山口さん。仕事を終えた解放感にひたると同時に、やはり仕事柄なのか店に並ぶお酒や旬の肴などについつい目がいってしまう。大阪大学を卒業後は長年にわたって金融関係の仕事をしていた山口さんが、どのようにして出版業に携わることになったのか。そこには「偶然の出会い」と、山口さんが歩んできたなかでの「必然のなりゆき」があった。

 

錚々たる教授陣がいる阪大で勉強したくて

京都・西陣織で、漆を使った金箔の「箔押し」を家業とする家の長男として生まれた。大学へ進学する時に、「好きな数学を生かせる学部ということで経済学部に行こうと思いました。当時、関西にある国立大学で、大阪大学には錚々たる先生方がおられ、経済を勉強するならこういう環境の中で学びたいと思ったのがきっかけでした」

入学後は公共経済学を専攻し、後に経済学部長になった柴田弘文教授のゼミで学んだ。向学心旺盛で「土曜日に開講する講義も、とても興味を引き付ける授業だったので、皆勤してちゃんとノートをとっていました」という。


余暇も謳歌

クラブ活動は、高校の先輩や同級生が所属し、合格発表の時に胴上げをしてもらったのが縁で男声合唱団に入部したが、家族の病気介護もあって、1年で退部。その後は勉学に励む一方、幼い頃から素潜りが好きだった延長線上でスキューバダイビングに魅せられ、国内各地はもちろん、オーストラリアやフィジーにまで出かけたとか。

 

米国公認会計士資格を取りキャリアアップ

大学4年生を迎えた1989年はバブル経済の真っただ中。「金融か商社を志望しました。それも全国を飛び回るよりも、地方に腰を据えた地方銀行の方が自分のやりたい仕事にじっくり打ち込めるのではないかと、南都銀行(奈良市)に就職しました」。こうして社会人生活が始まり3年が経った時、銀行内で「関連の深い三菱銀行香港支店(当時)への6ヶ月間研修の募集」があり、それに応募したところ山口さんだけが見事に合格。

「もともと外国語を学ぶのが好きだったので、現地での生活もすんなりと受け入れられたし、広東語も少しは話せるようになりました」。その経験が買われて帰国後は国際部で海外投融資を7年にわたって担当。さらに「会計の基準が国際会計に移行しようという時代の趨勢もあって、米国公認会計士の資格を取得しました」。南都銀行に16年勤めた後、外資系投資信託運用会社のフィデリティ(ボストン)等の勤務を経て、1人でコンサルティング会社を立ち上げた。そしてここで、思いもかけなかった出版業界との出会いがあった。


畑違いの仕事へ

「中小企業の財務サポートをしていくなかで、『たる出版』の髙山惠太郎代表(現・会長)と出会い、財務的な相談を受けるようになり、経営ミーティングにも参加するようになりました」。昔からおいしいお酒や食べ物を探すこと、さらに文章を書くことも好きだった山口さんにとって、出会うべくして出会った仕事でもあった。同誌に「はじめの京はじめ」というエッセイを連載したことでいっそう距離が縮まり本格的に経営参画。2015年1月に社長に就任した。

 

誌面作りは30代、40代も意識。将来は英語版も

「関西は出版不毛の地と言われ、ほとんどの会社は東京にシフトしています。そうしたなか、お酒の業界だけでなく関西の文化人にも愛され、創刊から35年続いてきた『たる』を守り、次の世代に向けて大きくしていきたいと思っています。紙媒体が厳しい状態に置かれている今、出版業をどう活性化していくのか?重い使命を背負っています。電子書籍化も検討しなければなりませんが、紙媒体が無くなることは決してありませんから」

現在の読者層は50代や60代の男性が多いが、「最近は30、40代も意識した誌面作りをしています。社員はたった8人と少数であるので、みんなには常に自分のやりたいことを持って取り組んで欲しいと話しています」とも。和食が世界遺産になり、日本酒やジャパニーズウイスキー等が海外でも人気となるなか、「いずれは英語版を作って、日本の食文化を世界に発信していきたい」と夢は広がる。

 

いろいろな人と出会うことが、大きなプラスに

 一方で、米国公認会計士として国内や香港などを飛び回る。そんなハードな仕事の合間に熱中しているのは、中学時代にも没頭した陸上競技。「マスターズ陸上に登録して月に1回くらい競技に出ています。大会前にはお酒を極力控えていますが、お付き合いもありますし……」と日焼けした顔から白い歯をのぞかせた。さまざまな出会いを経てきた道のりを振り返り、大阪大学で学ぶ後輩には「4年間という限られた時間の中で、いろんな人と知り合いになり、それを継続していくこと。どれだけ人を知っているかが仕事にも私生活にもプラスになる」とアドバイスを送る。

 

●山口 一(やまぐち はじめ)氏

たる出版株式会社代表取締役社長。1990年大阪大学経済学部卒業。南都銀行に入行、在職中に米国公認会計士の資格を取得。その後、外資系投資信託運用会社等を経て独立し、コンサルティング会社を設立。2015年から現職。

企業情報

たる出版(大阪市中央区南久宝寺町4-5-11)

酒のおいしい味わい方や酒にまつわるグルメ、食文化などを紹介する月刊誌「月刊たる」を1980年に創刊。現在は毎月10万部を発行。「壽屋コピーライター 開高健」(坪松博之著)などの単行本も出版している。

ホームページ http://taru-pb.jp/

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