最新情報

災害時に応用可能なデータ共有プラットフォームの構築に成功―並列分散ストレージ技術を用いた新システム太平洋横断実証実験にも成功―

2013年12月16日(月)

リリース概要

大阪大学を中心とする8機関によるDistcloudプロジェクト※1(代表:大阪大学サイバーメディアセンター教授 下條真司)は、複数の大学および研究機関からなる広域分散環境に仮想的なデータ共有プラットフォームを構築し、約2.4万km離れた拠点間で仮想計算機(Virtual Machine: VM)を無停止で移動することに成功しました。この距離は地球の外周の半分以上に相当します。

従来、情報データの災害対策としては遠隔地のデータセンターにバックアップを保存する方法やアクティブ・スタンバイで構成する手法などがありましたが、これらにはコスト面での問題やパフォーマンス、レスポンス時間における問題点がありました。

本プラットフォームでは、並列分散ストレージ技術という、複数拠点が提供するストレージをまとめて大きな一つのストレージとして扱う手法を用いて、地理的に離れた場所でデータを分散保存するため、障害・災害時におけるデータの永続化や、グローバルなサービスをよりよいレスポンスで提供することを可能にします。この技術により、企業における事業継続計画や、行政サービスの継続的提供、災害復旧に向けた情報共有などの情報管理に貢献することが期待されます。

図1 Distcloudプロジェクトの概念図

研究の背景

本技術は“Long Distance Live Migration”と呼ばれており、事業継続計画(Business Continuity Planning: BCP)や災害時回復(Disaster Recovery: DR)への活用が注目を集めています。本研究の成果によって本技術の実用化が進むことが期待されます。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

当プロジェクトでは、国産の並列分散ストレージ技術※2を応用し 、以下の3つの特徴を持つ広域分散ファイルシステムの実現・実用化を目指しています。

・Long Distance:地理的に離れた拠点間でデータ空間の共有が可能
・Multi-Site:異なる3拠点以上でデータの冗長化が可能
・All Active:複数拠点から同時に読み出し・更新が可能

この仕組みは、地理的に離れた場所でデータを分散保存するため、障害・災害時におけるデータの永続化や、グローバルなサービスをよりよいレスポンスで提供することを可能にします。

今回は、上記の仕組みをLong Distance Live Migrationに応用しました。具体的には、分散ファイルシステム上に保存されたVMの状態を地理的に離れた複数拠点(国立情報学研究所(東京)、金沢大学(金沢)、広島大学(広島))を学術情報ネットワークSINET4※3で接続して共有し、VMを無停止で移動させる「ライブマイグレーション」※4を実施し、正常に動作することを確認しました。また、ライブマイグレーションにかかる時間も、単一のデータセンター内で実施する場合と比較して、十分に実用的な性能であることも確認しました。

図2 太平洋横断実証実験の概要

また米国デンバーで2013年11月17日から開催された国際会議SC13※5会場において、情報通信研究機構(NICT)が提供する新世代通信網テストベッドJGN-X※6を用いたライブマイグレーションのデモンストレーションを行いました。SINET4で接続された3拠点のうち広島大学をJGN-Xと接続し、ロサンゼルスにあるJGN-X拠点で折り返す経路を加えました。これにより広島大学拠点を仮想的に他2拠点から約2万4千km離れた環境としてライブマイグレーションを行い、正常に動作することを確認しました。

本プロジェクトでは、今後、耐障害性の検証、多拠点への拡張などの実証を進め、より実用的な技術の確立を目指して研究開発を進めてまいります。

組織構成

代表: 大阪大学 教授 下條真司

参加組織:
 大阪大学,金沢大学,国立情報学研究所,高知工科大学,情報通信研究機構,奈良先端科学技術大学院大学,広島大学,北海道大学

用語解説

※1 Distcloudプロジェクト
日本学術振興会産学協力研究委員会インターネット技術第163委員会(ITRC)の地域間インタークラウド分科会(RICC)による研究プロジェクト。

※2 国産の並列分散ストレージ技術
株式会社インテックの独自開発によるEXAGEプラットフォームを応用しています。

※3 SINET4
2011年4月から国立情報学研究所(NII)により運用が開始された、日本全国の大学、研究機関等の学術情報基盤を担う情報通信ネットワークのこと。

※4 マイグレーション
VMを、現在動作しているハイパーバイザ(ハードウェアを模倣するソフトウェア)から、他の物理サーバ上で動くハイパーバイザへと移住(migrate)させること。VMを休止状態にしてから移住させるコールドマイグレーションと、活動状態のまま移住させるライブマイグレーションがある。

※5 SC13
SC(Supercomputing Conference)とは1988年からACMとIEEEComputer Societyにより開催されているスーパーコンピューター、高性能コンピューティングなどにフォーカスした国際会議のこと。正式名称は「International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis」。2013年に開催されたSCをSC13と呼ぶ。

※6 JGN-X
独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が2011年4月から構築・運用を開始した新世代通信網テストベッドのこと。

参考URL

大阪大学サイバーメディアセンター
http://www.cmc.osaka-u.ac.jp/j/index.html

distcloud
http://ricc.itrc.net/distcloud

このページのトップへ