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日本の大学では初となる8大学による電子書籍の総合的な実証実験の開始(10/1~)

2013年10月9日(水)

リリース概要

大阪大学は、2013年10月1日から、大学図書館電子学術書共同利用実験に参加している8大学(慶應義塾大学(幹事校)、大阪大学、神戸大学、東京大学、名古屋大学、奈良先端科学技術大学院大学、福井大学、立命館大学)合同で、大学図書館における電子書籍の活用に関する総合的な実証実験を行っています。これまで1大学あるいは単独機関による電子書籍に関する実験は行われてきましたが、今回、日本の大学では初めて8大学の規模で合同実証実験を実施します。

実験では、専用アプリを搭載したiPad等のデバイスを一定期間貸出して行うモニター実験や電子書籍の発見性を高めるナビゲーション・システムの検討、学生や研究者等が電子書籍化を期待している書籍の調査、電子教科書の配信・利用実験などを行います。

今回の実験により、大学図書館に共通する電子書籍の「利用のイメージ」が明らかとなり、本格的な電子書籍サービスの実現に必要な基礎データが収集されることが期待されます。また、実験期間中、参加大学と出版社との間でサービスの実用化に向けた話し合いも行っていきます。

これら参加大学での実験や出版社との「対話」を通じて、日本語学術書の電子化を促進することが、今回の大学図書館電子学術書共同利用実験の目的です。

プロジェクトの概要と経緯

海外では、数百万から一千万点規模の電子学術書(電子書籍化された学術書)を画面上で利用できる大学図書館もあります。一方、日本では、電子書籍化された書籍自体が少なく、特に大学図書館が必要とする日本語学術書の電子化は進んでいません。

2010年10月から2012年3月末までの間、慶應義塾大学メディアセンター(図書館)が『電子学術書利用実験プロジェクト』を企画し、大学図書館における電子書籍の有効性についての検証を行ってきました。同プロジェクトには、出版社や企業も参加しており、実験で得た読者の声を共有してこの問題について考えてきました。「大学での電子書籍に対するニーズ」や「電子書籍閲覧システム(BookLooper)のKCCS(京セラコミュニケーションシステム)社との共同開発」などで一定の成果を得ましたが、大学図書館全体でのニーズの証明(汎用性)や実用化の面で課題を残しました。

そこで、慶應義塾大学は2012年度から『大学図書館電子学術書共同利用実験』を企画し、他大学に参加を呼びかけ、新たな2年間の活動を開始しました。2012年度に4大学(神戸大学、名古屋大学、奈良先端科学技術大学院大学、福井大学)、2013年度に3大学(東京大学、立命館大学、大阪大学)が加わり、現在は大阪大学を含めた8大学が参加しています。

昨年度(2012年度)は、新規参加校での環境整備と慶應義塾大学で行った実験を雛形にしたモニター実験を3大学で実施しました。システム面での評価に違いが認められるものの、概ね慶應義塾大学での結果と同じ傾向を示していました。そして、別の視点からの知見を得るために、今回、2013年10月1日からの3ヶ月間、同時期に同じ手法で行う大規模な合同実験を計画しました。設置学部や学生数の異なる国立、私立の8大学が合同で実験を行うことにより、大学図書館に共通する電子学術書に対するニーズが明らかになることが期待されます。

合同実証実験の内容

(1)8大学合同モニター調査

合同実験の基本となる調査です。専用アプリが搭載されたiPadなどのデバイスを一定期間モニターに貸与して利用してもらい、アンケートやインタビューでその評価を集めます。これまでのモニター実験の規模は10~20名でしたが、合同実験では大学ごとに10~20名のモニターを集める計画です(全体でモニター数の8~10倍増を予定しています)。

モニター調査の目的は大学図書館における電子書籍の「利用のイメージ」を掴むことにあります。実験期間中の利用分析、アプリ(閲覧システム)の評価、電子書籍で読みたいコンテンツの調査、デバイスによる利用法の違いなどを調べます。これまでも「電子書籍は1冊の通読よりも、部分利用に向いている」や「紙の書籍と電子書籍では、利用する目的や場面で使い分けが起こる」といった断片的なイメージを得ていますが、今回の実験で全体像の把握が期待されます。

また、いくつかの大学では、一般学内者に対する電子書籍の閲覧サービスも同時に開始します。合同実験は2013年12月末で終了しますが、閲覧サービスは2014年3月末まで行う予定です。

(2)新しいナビゲーション・システム

電子資料の登場により、「ディスカバリーツール」と呼ばれる統合的な情報検索システムが普及してきています。ディスカバリーツールは、電子資料やインターネット上の情報源も検索することができ、情報源へのナビゲートを行います。

合同実験では、商用ディスカバリーツールであるEBSCO社のEBSCO Discovery ServiceやEx Libris社のSFXを使用し、異なる図書館システムを使用している参加大学の間で、電子書籍の「発見」に必要な検索データの作成と流通、ナビゲーション・システムの検討を行います。

(3)大規模コンテンツ調査

現在の商品化された電子書籍に対する大学図書館の大きな不満は、読みたい書籍(コンテンツ)が提供されていないことにあります。出版社が電子化するコンテンツを選ぶ際は、書籍(冊子)販売への影響や権利処理の難易度などが考慮されますが、読者のニーズは優先度が低いように見受けられます。一方、大学図書館でも、感覚的にあの出版社のこの本が読まれている、という理解はあっても、出版社との交渉で根拠となる基礎データは持ち合わせていませんでした。

そこで、合同実験では大規模なコンテンツ調査を実施します。図書館資料の貸出ログ分析、モニター調査での質問や聞き取りなど、複数の方法を組み合わせる予定です。本調査により、参加8大学だけでなく、同規模の大学図書館にも共通するコンテンツ利用の実態が明らかになることが期待されています。

(4)電子教科書の提供・利用実験

現行の教科書(冊子)にもミスマッチがあるようです。授業で教える内容が増えてきており、多くの授業において1冊の教科書では必要な情報をカバーしきれなくなっています。一方、学生の購買力には限界があるため、教員自作の資料配布などで不足分を補っているのが現状です。

学生のアンケートを見ると、その解決策として、電子教科書への期待が高いことがわかっています。電子媒体の特性である編集機能を使って、異なる書籍から必要な部分をピックアップした授業内容に合った教科書が提供されることを望んでいます。

電子教科書の提供・利用実験はいくつかの大学に限定して行いますが、実際の教科書を提供することで、紙の教科書と電子教科書の使い方の違い、授業利用に必要なサービスや機能の評価、理想の教科書像などを調査する予定です。授業の変化に対応した新しい教科書モデルを考える場合も、その中で電子書籍が担う役割や可能性についての検討が期待されます。

合同実証実験で期待される成果

合同実験の主たる目的は大学図書館における電子書籍の『利用のイメージ』を明らかにすることです。多様性のある8大学の間で共通性が発見できれば、そのイメージは大学図書館に共通のものと考えることができます。さらに、このイメージは、図書館のような団体・機関で電子書籍を利用する際の利用モデルにも応用できます。また、合同実験から得られる調査結果やデータは、出版社との話し合いでも活用できるものです。

参考URL

大阪大学附属図書館
http://www.library.osaka-u.ac.jp

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