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カーボンナノチューブの歪み分布を光でナノ観察に成功―世界初! ナノカーボン材料の評価・分析・識別に貢献―

2013年10月7日(月)

リリース概要

大阪大学大学院工学研究科・河田聡教授(特別教授)の研究グループは、カーボンナノチューブの局所的な構造歪みの分布をナノレベルで光観察することに成功しました。カーボンナノチューブの六員環の歪み(ねじれと引っ張り)が光学顕微鏡で観察されたのは世界で初めてのことであり、その技術はカーボンナノチューブの評価・分析研究はもちろんのこと、様々な最先端ナノ材料、先端ナノデバイス、バイオマテリアルの製造及び基礎研究に活用されることが期待されます。

本成果は2013年10月7日(ロンドン時間)に英国Nature Publishing GroupのNature Communicationsに掲載されます。

研究の背景

カーボンナノチューブ(CNT)は炭素原子だけで構成されるナノのチューブであり、日本人の飯島澄男氏によって1991年に発見されました。鋼鉄よりも20倍強く、アルミニウムの半分の軽さで、ダイアモンドより熱伝導性が高く、電気伝導度、耐熱性、分子吸着力、異方性、分子原子の内包機能などにおいて既成の材料を圧倒しており、21世紀の最先端の機能性材料として基礎科学及び産業化研究が進んでいます。

しかし、その製造技術は十分実用化しているとは言えず、評価手法も確立していませんでした。今回の研究では、先端増強ラマン顕微鏡を用い、カーボンナノチューブのそれぞれの場所におけるチューブの歪みの様子をリアルタイムでその場で観察することに成功しました。これにより、カーボンナノチューブをナノレベルで評価することが可能となり、ナノ材料の開発に大きな貢献が期待されます。

研究成果

図1は、「CNT」という文字に描いたカーボンナノチューブを、開発顕微鏡を用いて観察した結果です。色は歪みの程度を数値化してカラー化しています(歪みの量によって、ラマン散乱光の色が変わります)。文字は、金属針でチューブを引っかけて引き延ばしたりねじったりして描きました(図2。論文中にはムービーあり)。結果的に場所毎に歪みの種類と量が異なります。カーボンナノチューブを使ったナノ電子回路などのデバイス・材料においてもこのような歪みを含みます。図3に、カーボンナノチューブの引っ張りとねじりによる歪みの分子構造を示します。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

カーボンナノチューブは、2000年のクリントン大統領のナノテク国家戦略の所信表明においてキーとなる材料であり、ナノサイエンスはもとより、産業分野・医療分野などにおいて次世代の新材料として広範な応用が期待されてきました。各産業界からの所望の種類(層数、径、掌性)のカーボンナノチューブを高い品質かつ高い歩留まりで製造することは容易でなく、その実用化を阻んできました。評価技術は原子間力顕微鏡の利用が有望でしたが、その場合は真空中に試料を準備する必要があり、その場観察ができません。本研究成果は、これを解決する技術の開発であり、カーボンナノチューブの実用化を促進するものであると考えられます。

これを可能とした先端増強ラマン顕微鏡は河田教授が1992年に発明したナノの光学顕微鏡(近接場光学顕微鏡)を原理とし(特許第3196945号)、それにラマン散乱分光法を組み合わせた技術です。本成果により近接場光学顕微鏡の応用は一気に広がり、ナノ分解能での光学顕微鏡が広くサイエンスと産業分野において活用されることになることと期待されます。

特記事項

掲載論文情報:"Tip-enhanced nano-Raman analytical imaging of locally induced strain distribution in carbon nanotubes"
Taka-Aki Yano,Taro Ichimura, Shota Kuwahara, Fekhra H’Dhili, Kazumasa Uetsuki, Yoshito Okuno, Prabhat Verma and Satoshi Kawata.
Nature Communications, DOI: 10.1038/ncomms3592 (Oct 7, 2013)
本研究は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)プロジェクトの支援による成果です。

参考図

図1 カーボンナノチューブの光学像
500nmx300nm;スケールバーの長さは100nm

図2 CNTという文字の描き方
論文中には文字が描かれていくムービーあり

図3 カーボンナノチューブの六員環の歪み

参考URL

大阪大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 ナノフォトニクス領域
http://lasie.ap.eng.osaka-u.ac.jp/home.html

河田聡
http://www.skawata.com

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