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乳がん細胞の逃亡を抑制する遺伝子を発見―新たな乳がん治療薬・抗がん剤の開発に期待

2013年7月4日(木)

リリース概要

大阪大学大学院歯学研究科薬理学教室の佐伯万騎男講師らの研究グループは、2006年に発見していた遺伝子「Monad」に、乳がんにおける原発巣のがん細胞が直接に周囲の組織や臓器に広がっていく「浸潤」を抑制する機能があることを発見しました。これは、大阪大学医学系研究科外科学講座(乳腺・内分泌外科学)、トロント大学との共同研究による成果です。

研究チームが発見していたMonadを浸潤力の強い乳がん細胞に発現させると乳がん細胞の浸潤力が失われました。また乳がんがリンパ節に転移した患者では、Monadの発現が低下していることもわかりました。今回の研究成果から、Monadの発現を高めるような薬を開発することができれば、乳がんの浸潤転移を抑制できることが考えられ、予後が悪い乳がんの新しい治療薬になる可能性があります。

研究の背景

近年、我が国において、高エネルギー・高カロリーの食事摂取といった生活様式の欧米化に伴う乳がんの罹患患者数の増加は顕著であり、2000年以降、罹患患者は女性のがんの第一位となっています。乳がんは原発巣の治療後も20-30%では転移、再発がみられる根治が困難ながんですが、がんの浸潤転移は非常に複雑な生物学的過程を経ることから、そのメカニズムの解明やそれに関わる遺伝子の同定ががん研究の中でも最も遅れている分野でもあります。

最近ではアメリカの女優が乳房予防切除を受けたことが大きな話題になっていますが、なぜこのような苦渋の決断に患者が迫られるかを考えると、乳がんを発症した場合、現在の治療法を受けても20-30%では転移・再発がみられるという点に大きな原因があると考えられます。

今回、どのようなしくみでMonadが乳がんの働きを抑えているかを網羅的遺伝子解析により調べたところ、乳がん細胞が自ら作り出し、浸潤を引き起こす蛋白質の分解にMonadが関与していることがわかりました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

がんの転移はがん患者の予後を規定する最も大きな要因であり、がんが転移しているという診断は、がんの患者にとって測り知れない精神的ダメージを与えます。したがって浸潤と転移を抑制する治療法の開発は国民の大きな関心事です。がんの浸潤転移に関わる分子を標的にした分子標的薬が登場すれば、がん転移の克服ならびに生存率の大幅な改善が期待されます。本研究の成果から、Monadの発現を高めるような薬を開発することができれば、乳がんの浸潤転移を抑制できることが考えられ、予後が悪い乳がんの新しい治療薬になる可能性があります。

特記事項

本研究成果は7月3日付けで米科学誌プロスワン電子版に掲載されます。

参考URL

大阪大学 大学院歯学研究科 薬理学教室
http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~pharm/

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