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大エネルギーレーザーを使ったキロ・テスラの強磁場の生成に成功―夢のエネルギー源の実現と新しい天文学の発展へ貢献―

2013年1月31日(木)

リリース概要

大阪大学レーザーエネルギー学研究センター、広島大学大学院工学研究科、レーザー技術総合研究所、九州大学大学院総合理工学府、核融合科学研究所の研究グループは、大エネルギーレーザー装置「激光XII号」(図1)と大阪大学が発明した「レーザー駆動キャパシター・コイル」(図2)を用いて、最大1.5キロ・テスラ(1500テスラ = 地磁気の約5000万倍)の磁場を自由空間中に作り出すことに成功しました。この強磁場を利用することで、夢のエネルギー源である高速点火レーザー核融合の実現に一歩近づくとともに、新しい分野であるレーザー宇宙・惑星科学研究において、中性子星近傍のような超強磁場下での原子の振る舞いを実験室内で模擬できるようになるなど、研究対象となる宇宙・惑星現象が拡大すると期待されます。

 

研究の背景と内容

本研究成果では自由空間中に強磁場を生成する手法を確立し、プラズマ・ビーム科学、宇宙惑星科学、物質科学、原子分子科学などの分野において、強磁場を応用した新しい研究の発展に寄与することが期待されます。初期に弱い種磁場を印可した金属円筒又はプラズマ球殻を爆縮する磁場圧縮法(爆縮法)によって、キロ・テスラ級の磁場は既に実現しています。しかしながら、強磁場の幅広い応用の為には、強磁場への多方向からのアクセスのしやすさ並びに優れた形状制御性が求められていました。

本研究の最も重要な成果は、国内最大のレーザー装置「激光XII号」と「レーザー駆動キャパシター・コイル」を用い、自由空間に最大で1.5キロ・テスラの磁場を作り出すことに成功したことです。自由空間に強磁場を生成したことで、調べたい物質を容易に強磁場中に置くことができるようになりました。大エネルギーレーザーを物質に照射することで得られる、1000万倍の大気圧に相当する超高圧力および1000万度以上の超高温度と強磁場を組み合わせれば、極限物質及び極限プラズマの磁場に対する特性を研究することが可能です。この一例が、後述する磁場による光速の電子ビームの制御です。また、複数のキャパシター・コイルを配置することで、様々な磁場形状(ミラー、カスプ、トカマク等)を作ることができるため、制御された磁場形状を用いた無衝突衝撃波や磁気リコネクションの研究が可能になります。

 

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

大阪大学レーザーエネルギー学研究センターは、核融合科学研究所との双方向型共同研究にて、レーザー核融合エネルギーを研究しています。大阪大学発案の高速点火方式は、比較的小規模なレーザーでエネルギー発生が可能と予測されています。本成果のキロ・テスラ磁場を使うことで、高速点火レーザー核融合の成功に不可欠な、光速の電子ビームの運動制御が可能になり、その成功に向けて大きく研究が前進しました。

同時に、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターは、共同利用・共同研究拠点としてレーザー宇宙・惑星科学を推進しています。本成果を活用することで、強磁場に絡んだ宇宙・惑星現象、例えば無衝突衝撃波、磁気リコネクション、ランダウ量子化などを実験室内で再現し、その背後にある物理を詳しく調べることが可能になるとともに、レーザー宇宙・惑星科学の可能性が更に広がり、潜在能力が高まったと言えます。

更に、7テスラの種時場を圧縮することで約570倍増幅し、現時点で地上最大の4000テスラを達成しているレーザー爆縮法と本成果(圧縮せずに1500テスラ)を組み合わせれば、史上最大強度の磁場を地上に作り出せると期待されます。

 

特記事項

本研究成果は、英国オンライン総合学術誌「Scientific Reports」(http://www.nature.com/scientificreports) に1月30日付けで掲載される予定です。本研究成果の一部は、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの装置・施設を用いた研究成果です。なお、本研究は、科学研究費補助金、核融合科学研究所双方向型共同研究、および大阪大学レーザーエネルギー学研究センター共同利用・研究からの支援のもとで実施されました。

 

参考図

図1 大エネルギーレーザー装置「激光XII号」
大阪大学レーザーエネルギー学研究センターにある、国内最大のレーザー装置。同センターは共同利用・共同研究拠点として、幅広い科学分野での大エネルギーレーザー装置の利用を推進している。

図2 大阪大学が発明した「レーザー駆動キャパシター・コイル」
このコイルは、平行に並べた直径3mmの小さな二枚の円盤と、二枚の円盤をつなぐ太さ50ミクロンのワイヤーで構成され、発生する磁場強度を高めるために、ワイヤーを曲率半径250ミクロンでU字型に曲げている。レーザーは、穴を空けた第二金属板側から照射し、レンズを使って第一金属板上に集光する。第一金属板はレーザー光によって1000万度以上に加熱される。すると、加熱された第一金属板から電子が飛び出し、飛び出した電子が第二金属板に衝突することで、金属板間に電位差が生じる。この電位差によってワイヤーに電流が駆動され、電磁石の仕組みで磁場が発生する。本研究成果では、レーザーを使い、瞬間的に大電流を発生させることで、従来の方法を上回る強磁場を達成した。

 

参考URL

http://www.ile.osaka-u.ac.jp/research/pxs/index.html

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