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生物の「ゆらぎアルゴリズム」を仮想ネットワーク制御技術に世界で初めて適用—大規模災害時の早期復旧・サービス継続を可能とする世界初のネットワーク制御技術を開発—

2013年1月24日(木)

リリース概要

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下 NTT)は、国立大学法人大阪大学(大阪府吹田市、総長:平野俊夫、以下 大阪大学)、国立大学法人電気通信大学(東京都調布市、学長:梶谷 誠、以下 電気通信大学)と共同で、生物学の知見に着想を得た「ゆらぎアルゴリズム※1」を仮想ネットワーク※2制御へ適用する事に世界で初めて成功しました(図1)。本技術を適用する事で、事前に予期できない災害・重大な事故が発生した場合において、迅速にネットワークを復旧することが可能となります。本研究成果の一部は総務省 戦略的情報通信研究開発推進制度SCOPE「管理型自己組織化技術に基づく多様なサービスを収容する光ネットワーク制御技術の研究開発」により実施したものです。

なお、独立行政法人情報通信研究機構(以下、 NICT)が2月5日〜7日の期間に開催するJGN-X※3広域実験イベントにて本制御技術を利用した輻輳解消実験を行う予定です。実験では、沖縄から北海道へ映像を配信し、疑似トラフィックで輻輳を発生させ、輻輳状態からの回復について確認を行う予定です。

 

研究の背景

近年、クラウドの進展などに伴いネットワークサービスが多様化し、M2M/IoT※4などの多種多様なアプリケーションが普及する事で急激なトラヒック量の増減が発生するようになっています。また、同一のネットワーク上で複数のサービスが提供されることから、サービス毎に安定したネットワークサービスを運用する事がBCP(事業継続計画)の観点からも重要視されています。

これらの問題を解決するため、物理ネットワーク上に複数の仮想ネットワークをサービス単位で構築し、ネットワーク機能のカスタマイズや運用制御を実現することが求められています。また、トラヒック量の突発的かつ不規則な変化に柔軟に対応することが必要です。

そこで大阪大学が解明した「ゆらぎアルゴリズム」に注目し、NTT・大阪大学および電気通信大学の3者で仮想ネットワーク制御技術の研究開発を進めて参りました。

 

研究の成果

NTT・大阪大学・電気通信大学は共同で、生物学の知見に着想を得た「ゆらぎアルゴリズム」を仮想ネットワーク制御へ適用する事に世界で初めて成功しました。大阪大学は従来から「生体ゆらぎ※5」の情報システムへの応用において世界的に有名な研究機関であり、NTTは「ネットワーク制御技術」、電気通信大学は「通信プロトコル」に各々強みがありました。今回の成果は3者が高いレベルの独自技術を融合することではじめて実現することができました。

本制御技術を用いる事で、仮想ネットワークが環境変化を察知し自律的かつ適切に経路を選択することが可能となります。その為、トラヒック量の急激な増減や大規模災害が発生した場合においても、状況に応じた最適化・ネットワーク復旧を実現できる事を実証しました。

 

技術のポイント

(1)管理型自己組織化制御技術(大阪大学・NTT)
「ゆらぎアルゴリズム」を用いた仮想ネットワークの制御技術。環境変化に適応した最適トポロジーを各仮想ネットワークで独立に計算するため、既存の最適化技術より計算時間が短く、環境変化への迅速な対応が可能となります(図2)。これにより、ネットワーク復旧を実現することが可能となります。大阪大学が生体ゆらぎの知見に基づき、主導的に理論面の検討・評価や基本アルゴリズムの開発などを行い、NTTが実ネットワークへの適用に向けた制御アルゴリズムの改善、制御サーバ開発、技術実証などを行いました。

(2)仮想ネットワーク調停技術(NTT・大阪大学)
仮想ネットワーク上でICT機器のリソース競合が発生した場合、迅速に調停して性能回復を実現するリソース制御技術。大阪大学が仮想ネットワーク同士で状態をフィードバックし制御を安定化する仕組みを開発し、NTTが特定の仮想ネットワークを隔離するリソースアクセス制御の仕組みを開発しました。そのためネットワーク全体で負荷を分散する事が可能となります。

(3)経路制御情報広告方式(電気通信大学)
仮想ネットワーク上でネットワークトポロジー最適化に必要なトラヒック情報を効率的に収集する通信プロトコル。電気通信大学が開発した方式で、ネットワーク全体ではなく、隣同士の機器とトラヒックの情報を交換しながら、輻輳が発生している機器の情報のみを選択的に情報収集することで抜本的に情報収集の負荷を削減します。

 

今後の展望

今後は、JGN-X広域実験イベントでの輻輳解消実験から得られた知見などを踏まえ、実運用に必要な機能拡充や多様な条件での技術の実証を行っていく予定です。将来ネットワーク/新世代ネットワーク※6への適用を視野に入れ、2020年の実用化を目指して研究開発を進めていきます。

 

参考図

図1 世界で初めて実現した仮想ネットワーク制御技術の概要


図2 管理型自己組織化制御の概要

 

用語解説

※1 ゆらぎアルゴリズム
生体はノイズを利用して複雑なシステムを頑強かつ低消費エネルギーで動かしている。その仕組みを「ゆらぎ」と呼び、生体ゆらぎを人工物に応用してイノベーションにつなげる試みが、大阪大学を中心に展開されている。

※2 仮想ネットワーク
通信インフラ上に構築された論理的なネットワーク。クラウドの進展により、複数の利用者のネットワークを同一の通信インフラ上に構築しつつ、各ネットワークの柔軟な構成変更と利用者間の通信の安全性を確保することが求められている。仮想ネットワークでは通信インフラを仮想化することでこのような要求を実現する。標準化機関ITU-Tにより勧告Y.3011として標準化されている。

※3 JGN-X
NICTが運用する研究開発用の全国規模のテストベッドネットワーク。NICTが推進する新世代ネットワークの実現とその展開のためのテストベッドとして構築、運用されている。また、その他の先進的なネットワーク技術および先端アプリケーションの実証実験を行うことができる。

※4  M2M/IoT
従来の一部の組織でのインターネット利用から人やモノ同士の通信にまで広がっている利用形態をM2M(Machine to Machine)、IoT(Internet of Thing)と呼ぶ。総務省の研究会では「モノのインターネット」の具体的な利用場面として「医療・福祉」、「環境」、「災害対策」、「交通・流通」、「産業」、「生活・娯楽」を挙げている。

※5 生体ゆらぎ
脳や遺伝子等の生体に共通するノイズによる動作する仕組みのこと。生体は複雑なシステムを持ちながら、環境変化に柔軟に対応しつつ低消費エネルギーで動作する。生体が持つ熱ゆらぎに起因するノイズが重要な役割を果たしていることが解明されつつある。

※6 将来ネットワーク/新世代ネットワーク
インターネットやNGN等、既に商用化されたネットワークの次世代を担うネットワークの基本設計や要素技術の研究が始まっており総称して「将来ネットワーク/新世代ネットワーク」と呼ばれている。将来ネットワーク/新世代ネットワークでは、現在のインターネットが抱える様々な問題点(スケール性、拡張性、セキュリティなど)を革新的な技術により解決することが期待されており2020年頃の実用化を目指して研究開発が進められている。現在、標準化機関ITU-Tにより標準化が進められている。

 

参考URL

http://www.anarg.jp/index.php

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