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まばたきの新たな機能を発見―映画を見ているときの脳活動計測でその役割が明らかに―

2012年12月25日(火)

リリース概要

大阪大学大学院生命機能研究科の中野珠実准教授らは、映画を見ている時に無意識に生じた瞬き(まばたき)の度に、内省などに関わるデフォルト・モード・ネットワーク※1の活動が一過性に上昇する一方、注意の神経ネットワーク※2の活動が減少することを発見しました。本成果は、長年の謎であった自発的な瞬きの機能的役割の解明に大きく貢献すると同時に、自然な環境下で外界の情報をどのようにヒトの脳内で処理しているかの解明につながることが期待されます。

 

研究の背景と内容

我々ヒトは1分間に15-20回ほど瞬きをしています。眼球を潤すという生理的機能のためには、1分間に3-4回で十分なことから、なぜこんなに頻回に瞬きをしているのか、その理由は不明でした。この問に答えるために、本研究では、イギリスの人気コメディショー「ミスター・ビーン(Mr.Bean)」から取り出した映像を見ている時に生じた瞬きに関連して、脳のどこが活動をしているかを機能的磁気共鳴画像法(fMRI法)※3により調べました。その結果、瞬きに伴って、安静時や内省をしている時によく活動するデフォルト・モード・ネットワークの活動が一過性に上昇し、一方、外界に目を向ける注意のネットワークの活動が減少していました(参考図)。瞬きと同じ時間だけ映像を消した場合は、このようなデフォルト・モード・ネットワークの活動上昇がみられませんでした。

これまで、デフォルト・モード・ネットワークと注意の神経ネットワークは、ぼんやりとした状態では数十秒毎に一方が活動すると他方が休むという緩やかな活動の交替を示すことが知られていました。今回の研究により、何かに集中して取り組んでいる時でさえも、数秒に1回瞬く度に、2つのネットワークの活動の交替が生じていることがわかりました。

私たちはこれまでに、映画の意味の切れ目で瞬きが起きていることを発見していました。今回の発見と合わせると、瞬きは一つのストーリーの流れに区切りをつけて注意を解除して、あらたな展開のために脳を開放するという重要な役割を果たしているのではないかと考えられます。

 

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本成果は、長年の謎であった自発的な瞬きの機能的役割の解明に大きく貢献すると同時に、自然な環境下で外界の情報をどのようにヒトの脳内で処理しているかの解明につながることが期待されます。瞬きによる神経ネットワーク間の変動が、映像観察だけでなく他の課題の時でも起きているのか、脳神経情報処理において神経ネットワーク間の変動の必要性がどこにあるのか、などの点について今後さらに研究を進めることで、瞬きの機能的役割の解明だけでなく、脳の情報処理機構の解明など幅広い展開が予測されます。

 

特記事項

本研究は、脳情報通信融合研究センター(CiNet)のプロジェクトとして、大阪大学大学院 生命機能研究科と情報通信研究機構 脳情報通信研究室の共同で行いました。本研究成果は、米科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン速報版で2012年12月24日(月)午後3時(米国東部時間)に公開されます。

 

論文名および著者名

Blink-related momentary activation of the default mode network while viewing videos
中野珠実1,2,3 加藤誠3,4 森戸勇介3,4 糸井誠司4 北澤茂1,2,3
1 大阪大学大学院生命機能研究科
2 大阪大学大学院医学系研究科
3 脳情報通信融合研究センター(CiNet)
4 情報通信研究機構 脳情報通信研究室

参考図

瞬目に応じて脳活動が変化した脳領域
(上図)赤色から黄色の領域は脳活動が上昇した脳部位。矢印で示した領域は、デフォルト・モード・ネットワークを構成している。
(下図)水色の領域は脳活動が低下した脳部位。矢印で示した領域は、注意のネットワークを構成している。

 

用語解説

※1 デフォルト・モード・ネットワーク
注意を要するような課題を行っている時よりも、何もしないで安静にしている時により活動が上昇する脳領域のことをデフォルト・モード・ネットワークという。脳の前頭葉内側部、頭頂葉内側部などの複数の脳領域がこのネットワークに含まれる。近年の研究により、このデフォルト・モード・ネットワークは、空想や記憶の想起、自己モニタリング、他者の心の推定など、様々な内的思考に関連していることが明らかになっている。

※2 注意の神経ネットワーク
外界にある特定の対象に注意を向けることに関連した脳領域のことを注意の神経ネットワークという。前頭葉の眼球運動を司る領域と、頭頂葉の領域が含まれる。

※3 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)
脳のある部位が活動すると、脳血流量が増加して、その部位の磁場が変化する。その局所的な磁場の変化をとらえて脳の活動を画像化する手法を機能的磁気共鳴画像法という。この手法を用いることで、外部刺激や課題に関連して脳のどこが活動したかを調べることができる。

 

参考URL

http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/general/lab/181/

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