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宇宙のガンマ線観測からの超ミクロのスケールにおける対称性の破れへの制限―量子重力理論の発展へ―

2012年12月6日(木)

リリース概要

大阪大学大学院理学研究科 當真賢二氏(日本学術振興会特別研究員(SPD) 、宇宙地球科学専攻宇宙進化グループ所属)、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(KAVLI IPMU) 向山信治 特任准教授、金沢大学大学院自然科学研究科 米徳大輔 准教授らの研究チームは、日本が独自に作成した天体観測機器によって、非常に遠方で起こったガンマ線バースト現象※1からの偏光を従来より高い精度で検出し、光の偏りがその長い旅路の間に回転しなかったことを明らかにしました。当研究チームでは、その超大スケールの観測結果から、超ミクロのスケールでの基礎物理的な対称性の破れに対し、これまでで最も厳しい制限を与えました。今後、この結果に沿うように量子重力理論が発展していくことが期待されます。

 

研究の背景

宇宙で起こるガンマ線バーストという爆発現象の光は、我々に届く間に何十億光年も宇宙を旅してきます。おもしろいことに、超大スケールの宇宙からの光を使って、量子重力理論が対象とするような超ミクロのスケールでの時空構造を調べることができます。

現在の地上実験で扱っているようなスケールにおいては、粒子と反粒子の役割を入れ換え、鏡に映し、時間の流れを逆向きにした場合の現象は、もとの現象と全く同じであることがわかっています。このことを「CPT対称性が保存されている」と言います。しかし、アインシュタインの相対性理論と量子論の統一を図る量子重力理論(たとえば超弦理論など)が予測するところによれば、超ミクロのスケールにおいては、時空構造が通常考えるものとは全く異なり、この対称性が保たれていない(破れている)可能性があるのです。

もしこの対称性が破れていれば、天体から光が伝わる長い旅路の間に効果が蓄積され、光の偏りが測定できるほど回転することになります。いままでの観測データでは、その効果は1千万分の1程度と見積もられていました。

今回、JAXAの小型ソーラー電力セイル実証機IKAROS※2に搭載された偏光検出器GAP※3によって、非常に遠方のガンマ線バーストの光の偏りを従来より高い精度で検出することに成功し、偏りの回転がないことが証明されました。この結果を受けて当研究チームは、理論的計算を行ない、対称性の破れが千兆分の1以下であるというこれまでで最も厳しい制限を課すことができました。

 

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

アインシュタインの相対性理論と量子論を統一する理論(量子重力理論)の構築は、現代基礎物理学の大きな目標です。これまで様々な種類の統一理論(超弦理論やループ重力理論など)が提唱され、盛んに議論されています。本研究は、これらの理論が対象とするスケールにおいても基本的な対称性が保たれていることを証明しました。このことは、対称性を破るような統一理論モデルを排除することになります。今後は、本研究の結果に沿うような理論モデルの構築が進み、統一の夢に近づくものと期待されます。

 

特記事項

本成果は2012年12月11日(米東海岸時間)に米国物理学会誌“Physical Review Letters”のオンライン速報版(http://prl.aps.org/)に掲載される予定です。

 

論文名および著者名

“Strict Limit on CPT Violation from Polarization of Gamma-Ray Bursts”

Kenji Toma, Shinji Mukohyama, Daisuke Yonetoku, Toshio Murakami, Shuichi Gunji, Tatehiro Mihara, Yoshiyuki Morihara, Tomonori Sakashita, Takuya Takahashi, Yudai Wakashima, Hajime Yonemochi, and Noriyuki Toukairin

 

参考図

図1 本研究理論の仕組み
宇宙で起きたガンマ線バーストの光は、その振動がある程度直線的に偏っています。それは左右回りの振動の重ね合わせで表せます。もし対称性が破れていれば、左右回りの振動の速度が異なり、その結果、光の直線的偏りがゆっくり回転することになります。この効果は光の波長ごとに大きさが異なり、観測によって検出することが可能となります。

図2 IKAROSの宇宙におけるイメージ図(Courtesy of JAXA)

 

用語解説

※1 ガンマ線バースト現象
数十億光年の距離から数十秒程度、強烈なガンマ線が観測される現象であり、天空上で年間1000個程度発生します。全宇宙で最も明るく激しい現象とされています。ガンマ線バーストは数々の種族に分類されますが、そのうちある種族に関しては、星が一生の最後に崩壊する際に起こす超新星爆発の特殊なものであると考えられています。

※2 小型ソーラー電力セイル実証機IKAROS(図2)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が世界で初めて実現した、超薄膜の帆を広げ太陽光圧を受けて進む宇宙船(ソーラーセイル)です。ソーラー電力セイルは、帆の一部に薄膜の太陽電池を貼り付けて大電力発電を同時に行います。

参考URL http://www.jspec.jaxa.jp/activity/ikaros.html

※3 偏光検出器GAP
金沢大、山形大、理化学研究所が共同して作成した、ガンマ線バースト専用の偏光検出器。近年、世界で初めてガンマ線バーストの偏光のより高い精度での測定に成功しました。

参考URL http://astro.s.kanazawa-u.ac.jp/~yonetoku/gap/index.htm

 

参考URL

http://vega.ess.sci.osaka-u.ac.jp/~toma/index.html

http://member.ipmu.jp/shinji.mukohyama/index-j.html

http://astro.s.kanazawa-u.ac.jp/~yonetoku/

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