“オープン”—それは、人々や組織が共通の土台の上で競い合い、
時として連なり立場や利害を超えて力を一つにすることにより、
ことを興して、リアルな価値を共に創り出していくこと。
大阪大学は、1931年の建学以来、かねて大阪の地に根づいていた懐徳堂、適塾の市民精神を受け継ぎつつ、自由闊達な市民社会とのつながりを大切にし、地域とともにあらんとする精神を脈々と育んできました。活気溢れる市井に進んで門戸を開き、その豊かな多様性の中で、人類の理想を実現せんと努力する有為な人材を社会に輩出し、しなやかに実直に普遍の真理を見極め、世界最先端の学術研究の成果を世界に還元し続けてきました。これこそが「地域に生き世界に伸びる」をモットーとする大阪大学の真価です。大阪大学は、この真の存在価値にさらなる磨きをかけ、社会の旗手として、広く世界に夢と変革をもたらす原動力となります。
 現代社会において、人類は、地球環境の悪化、資源の枯渇、宗教や民族間対立など、地球規模の困難な課題に直面し、深まる不安の中で、私たち一人ひとりの未来への展望は大きく揺るがされています。また、人類は、予想をはるかに超えたグローバル化の波に翻弄され、寛容さを忘れ、平和への道筋を見失いつつあります。社会の安定的な持続可能性を取り戻すためには、科学技術の進展に加え、人や世の在り方に関する深い思索を常に伴うことが不可欠です。こうした総合的な知を創出し、希望ある未来を切り拓くことこそが真の意味でのイノベーションであり、今、大学に求められる使命といえます。
 そのような社会からの負託に応え、先人たちから引き継いだ歴史を次世代へと確実につなぐために、大阪大学は、創立90周年にあたる2021年を見据えた第3期中期目標期間の6年間を「進化の期」と位置づけ、たゆまぬ自己変革の指針を「OU(Osaka University)ビジョン2021」として、ここに示します。このOUビジョン2021は、大阪大学が国立大学法人として新たな船出を迎える際に宣言した「大阪大学憲章」の基本理念を、第3期中期目標期間において実装することを目的としています。
 わが国においてイノベーションが遅々として進まない要因として、組織の内と外の間に立ちはだかる厚い「壁」と、その「壁」の内側で作られる狭い了見に差配されたコミュニティの存在が大きいと考えられます。そこで、OUビジョン2021は、学内と学外を隔てる「壁」、また、学内における部局間の「壁」を取り払い、大学の知を広く世のため、人類社会の幸福のために開放すること、つまり「Openness(開放性)」を基軸とした上で、「Open Education」、「Open Research」、「Open Innovation」、「Open Community」、「Open Governance」の五つの柱から構成されています。大阪大学は、利害や立場を超えたあらゆる可能性の交差(cross)を実現します。すなわち、自ら誇りとする卓越した知の探求を礎としながら、学問分野間で知の交差に挑むとともに、社会の多様な担い手と協働することで、「知の協奏(Orchestration)と共創(Co-creation)」を実現する創発の場へと進化していきます。
 大学のシステムの変革を辿ると、古典の研究と教育から始まり専門職養成の機関へと変遷を遂げた中世から近世の大学モデルがUniversity1.0、研究の重視とともに研究と教育を一体化させたドイツモデルがUniversity2.0、大学院制度を新たに設け、さらに社会貢献という使命を提唱したアメリカモデルがUniversity3.0とするならば、今日の大学はUniversity3.0の直中にあります。大阪大学は、その先に未知なるモデルUniversity4.0が存在することを確信し、OUビジョン2021のもと、「知の協奏と共創」によりUniversity4.0の実現を目指します。さらに、学生・教職員をはじめ大阪大学のすべての構成員が一丸となり、お互いの関わり合いの中で潜在的な革新性をゆり起こすことで、「世界屈指の研究型総合大学」へと発展していきます。

 大阪大学の教育の基本は、学問の真髄を極める専門性の獲得に加え、幅広い見識に基づく確かな社会的判断力としての「教養」、異なる文化的背景をもつ人と対話できる「国際性」、自由なイマジネーションと横断的なネットワークを構想する「デザイン力」を備えた人材の育成です。
 世界の状況を見ると、複合的かつグローバルな課題が数多く存在します。国内に目を転じれば、「課題先進国」と呼ばれるように人口減少や高齢化等に伴う問題が山積しています。このような時代においては、細分化された専門分野に閉じたアプローチではなく、問題の本質を見極め、解決のための手立てを考える教育が求められます。大阪大学の有する多様な知や技能の活用と統合を図ることにより、新たな社会的価値を創出するイノベーション人材を育成することは大学の重要な使命です。
 大学を「知の社交空間」として、産官学のみならず広く市民社会に開き、オープンエデュケーションによる新たな学びの場を実現します。もはや高等教育は大学人だけが独占すべき営みではなく、問題の発生している現場にいる人々との共創も視野に入れるべきです。大学の専門知と産業界、市民社会との協奏と共創によるオープンエデュケーションは、専門知と社会の「新たな統合」を生み出していきます。
  • 社会の負託に応える人材の育成を目指す学部教育の推進
  • 新たな社会的価値の創出に挑む人材の育成を目指す大学院教育の推進
  • グローバルに通用する教育を実現するための制度改革
  • 多彩な人材獲得のための入試制度改革

 大阪大学は、「オープンリサーチ」の考えのもと、世界最高水準の基礎的、基盤的研究や学際融合研究が生み出す多様な知の創出と深化を通じて、心豊かな人類社会の発展に寄与し、世界的課題解決に貢献することのできる世界屈指の研究型総合大学を目指します。特に、卓越した研究力を有し、先端的な設備を備えた大阪大学が誇る世界トップレベル研究拠点(WPI)および共同利用・共同研究拠点等は、その先導的役割を担います。
 近年、超ビッグデータ時代を迎え、ビッグデータの高度な統合利活用と新たな知的価値の創造を通じた安心安全な社会の実現が喫緊の課題となっています。大阪大学のもつ高度な情報関連技術を駆使し、「データビリティ」、つまり、「利用可能な超大量データを将来にわたる持続可能性を保持しつつ責任をもって活用すること」による新たな科学の方法を探求します。「データビリティ」は、既存の科学技術・学術の新たな地平を切り拓くと同時に新たな学際融合研究の基盤となります。
 これらの研究基盤は、高度な研究マネジメント能力と高い倫理感をもった研究者を多数輩出し、わが国の学術を支える多様な人材が大阪大学に集うための求心力となります。
  • 真髄を極めた学術研究の基盤強化と国際化
  • 不正を起こさない環境整備と構成員の意識改革
  • 世界最高峰の研究拠点への進化
  • データビリティに基づいた異分野融合による新学術領域の創成
  • 未来に輝く若手研究者の育成
  • 卓越した知の拠点としての特色ある共同利用・共同研究の推進

 人類が抱えるグローバルで複合的な課題を解決し、より良き未来社会を構築する鍵は、オープンイノベーションの推進です。大阪大学は、世界でトップクラスのイノベーティブな大学として、さらに先進的な産学連携に取り組みます。
 大阪大学は、従来の産学連携のスタイルをパラダイムシフトさせ、新たな社会的価値の創出を目指した「産学共創」として、技術やサービスの創出だけではなく、それらのユーザーを視野に入れた国内外の異業種や異分野の協働にまで視野を広げていきます。多様な想いや願望が交差することによって新たな社会的課題が生まれ、またその解決策を社会に提示していくことで新たなシステムを構築するオープンイノベーションの新しいステージに、大阪大学は果敢に挑戦します。
 大阪大学が推進する「産学共創」は、参画するすべての人々の豊かな才能、着想、さらには感性の相互啓発を可能とします。それは、真に「何をすべきか」を考えられる「What to do重視の人材」を生み出し、社会と大学の間で人と価値の循環を創出するものとなります。
  • 大阪大学方式の包括的産学共創の促進
  • 大阪医歯薬ネットワークによるトランスレーショナルリサーチの事業化推進
  • 産学共創による人材育成拠点の形成
  • 出資事業による革新的技術の社会還元

 「知の社交空間」としての大学は、地域社会やグローバル社会に開かれ、知が自由に往来する場です。大阪大学は、そのモットーである「地域に生き世界に伸びる」を実践していくために、多様な知と人材が交差し、新たな価値を創出できるオープンコミュニティを創出します。
 懐徳堂と適塾の精神に基づき、学術、文化、芸術、医療における拠点として地域社会に貢献します。地域の多彩な担い手と積極的につながり、社会の在り方を模索することで総合大学としての可能性を最大限に発揮していきます。
 また、グローバル社会との交流を活性化し、多様な文化的背景をもつ人々との切磋琢磨を通じて教育研究活動を深化させます。人類が直面する複雑な課題に立ち向かい、希望ある未来を切り拓くために、グローバルなネットワークを活かした学術交流、国際協力、国際産学共創等のための学内体制を整備し、海外拠点活動を充実します。
 文化、言語、ジェンダーを超えた多様性を育むキャンパスを実現し、卒業生、元教職員等の世代を超えたネットワークに支えられたオープンコミュニティを築いていきます。「大阪大学で学んで良かった」、「大阪大学で働いて良かった」と実感し、さらには懐かしく思いを馳せることのできるキャンパスにしていきます。
  • 社学共創による学術・文化・芸術の地域拠点の形成
  • 地域医療からグローバル医療に貢献する附属病院のさらなる進化
  • グローバルなネットワークの拡大による知の協奏と共創
  • オープンでサステイナブルなキャンパスの構築
  • 新たな広報展開による世代間ネットワークの構築

 大阪大学は、絶えず自己を変革していくという伝統を継承し、自主独立の気概のもと、「学問の府」として、教育、研究、社会貢献すべての分野でさらなる高みを目指してきました。大学が岐路に立つ今、大阪大学に求められているのは、ダイバーシティを重視し、学生、教職員等の大学の構成員一人ひとりの可能性を最大限に引き出すことです。個々人の能力を結集し、あらゆる部局が自己革新のもとに創生を図り、世界屈指の研究型総合大学としてしなやかに飛躍するために、総長のリーダーシップと構成員の合意形成のバランスのとれた大学運営を行い、高い透明性をもったオープンガバナンスを実践します。
 中長期的な視野に立った安定的で健全な経営を行い、国際、財務、法務、広報等、大学運営に関わる専門分野における優秀な人材の養成を積極的に進めます。「学びがい、生きがい、働きがい」のある教育研究環境、職場環境づくりに取り組むことによって、大阪大学はわが国を希望に満ちた未来へと牽引するフロントランナーの役目を果たしていきます。
  • リーダーシップと合意形成のバランスに基づく高い透明性をもった大学運営
  • 男女協働をはじめとする全構成員が生き生きと活躍できる魅力ある環境づくり
  • 大学運営を支える優秀な人材の確保と専門人材の養成と活用
  • 中長期的財政ビジョンに基づく堅実な大学経営
  • 安定的で健全な経営のための自主財源の確保

  • 安全・快適で持続的な教育研究環境の構築